『この時代小説がすごい! 2022年版』 復活! そしてさらに充実の時代小説ベストランキング
もう年の瀬、書店には各ジャンルのランキングガイドブックが並ぶ時期ですが――「この時代小説がすごい!」が帰ってきました。2016年度版から6年ぶりの復活となった今回は、今年のランキングだけでなく、21世紀ランキングまで掲載という充実の一冊であります。
「書店員・書評家など、時代小説の目利きが選んだ、本当に面白い時代小説ランキング」を謳い文句に刊行されてきた「この時代小説がすごい!」。数年間連続して刊行された後、残念ながら2016年版を最後に刊行されていなかったのですが――今年、何の前触れもなく復活しました。
私も刊行のたびに、ランキングへの投票と作品紹介と、色々書かせていただいてきたのですが、ありがたいことに今回もお声がけいただいております。(あまり分量は書いていませんが……)
さて、「この時代小説がすごい!」の最大の特徴は、ランキングを「文庫書き下ろし」と「単行本」の二つに分けていること。
ファンの方であればよくご存知かと思いますが、確かに同じ歴史時代小説でも、この両者は発行点数や内容、作者の顔ぶれ(さらにはおそらく読者層も)大きく異なるために、納得の区分であります。
が、今回の最大の特徴は、それに加えて第三のランキング――「21世紀版文庫書き下ろしランキング」と銘打って、2001年~2021年の過去20年に発売された作品のベストランキングを掲載していることであります。
正直なところ、最初に過去20年間のランキングを、と言われた時にはかなヒエッとなりましたが、文庫書き下ろしという限定があったためかある程度絞ることができ、なかなか面白い経験ができました。
申し遅れましたが、今回もこれまで同様、各ランキングは第6位までを選んで投票するという形式。今年のランキングではそれぞれ19位まで、21世紀版では15位までの作品は、解説文付きで紹介されております。
私は例によって好きなように偏ったランキングを投票させていただき、解説文の方は極めて真面目に(いつもと文体が違うので特にそう感じます)担当させていただいております。
それはさておき、ランキングですが――これが(偏りまくった私の目から見ても)どれも納得の結果。なるほどこの作品があったか、この作品がこの順位かと、様々な驚きがありつつも、違和感なしというべきか――実にバランスのよいランキングと感じます。
それでいて、私のような人間が大好きな作品もランクインしている(投票したのだからまあ当たり前なのですが)のも嬉しいところで、尖った作品もきっちり入っているのにご注目いただければと思います。
特に文庫書き下ろしの第5位の作品は、投票したのが1位として投票した日下三蔵・末國善己・細谷正充の各氏、あと私のみ――正確には6位として投票した方が一人いらっしゃいますが――でこの順位という、色々な意味で実に興味深い結果となっています。
(ちなみに紹介文は私が担当しております。紹介できて嬉しかった)
そしてバランスが良いという印象は、その他の特集記事にもあてはまります。
・「江戸を生きる女たち」(女性主人公という視点からのキャラクター紹介)
・「新進作家の注目作品・シリーズ徹底ガイド」(ランキング順位にかかわらない紹介)
・「直近直木賞受賞作家の歴史時代小説全リスト」(直近6期の受賞作家の作品紹介)
これがまた内容的にも充実の、そしてチョイス等納得の記事揃いで、バランスが良いというより、もはや隙がないという言葉が適切に感じられるほどです。
歴史時代小説シーンのいまを知るために最適――という表現を使っても、決して大げさではないと感じます。
というわけで、自分も書いているというのを抜きにしても、この6年間の空白を埋めるかのように充実の一冊だった「この時代小説がすごい! 2022」。ぜひ来年も、そのまた来年も――と、刊行を続けてほしいガイドブックです。
『この時代小説がすごい! 2022年版』(「この時代小説がすごい!」編集部編 宝島社) Amazon
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