「鬼滅の刃」遊郭編 第三話「何者?」
鬼の気配を感じて追いかけるも姿なき相手に翻弄される伊之助。一方、泣いていた禿を宥めていた善逸は、禿の主・蕨姫花魁が上弦の鬼だと直感する。はたして蕨姫は、江戸時代から吉原の闇に巣食う上弦ノ陸・堕姫だった。善逸を鬼殺隊と見抜いた堕姫は、無惨の障害となる者たちを皆殺しにせんとする……
○アバンタイトル
いきなり画面に大きく「江戸・吉原」と場所が表示(今回多用される演出)されて、おそらくオリジナルで描かれる過去の物語。一人の遊女がある花魁の行跡を詰ってその部屋に入ったと思えば、一瞬後、部屋から出てきたのはその花魁のみ、遊女の姿は消え失せて――と、その場に一滴の血すら残されていないのが、何ともいえぬ凄みを感じさせます。
しかしこの場面はモノクロで描かれるのですが、前回の嘘がつけないで変な顔になる炭治郎の演出を思い出させるのが何とも……
○荻本屋の鬼?
アバンと重ね合わせるように描かれる大正の東京の吉原。鬼(?)が活動していたためすっかり勘違いしていましたが、いまは昼間だったことがこの描写からわかります(そしてすぐ後に酷い目に遭わされるおっさんの中に入る姿が)。
ここでもちまえの皮膚感覚から謎の鬼の動きを察知し、威嚇する伊之助ですがこれは効果なし。そのまま天井や壁の向こう側を縫っていくかのように移動する相手を追う伊之助ですが、さしもの彼でも追いきれず、途中でぶつかったおっさんに顔面パンチを……(死ぬんじゃないかしら)
ちなみにこのくだりの伊之助、猪突猛進とかガハハとか奇行がないので普通に口の悪い美少年に見えるのが面白い。また、敵を逃したシーンで襟をパタパタしてみせることで、文字通り肌感覚が使えない彼のもどかしさをさらりと描くのが巧みでした。
○善逸、上弦の鬼と遭う
一方、京極屋の善逸は、自分の耳を使って情報収集中。善逸の場合、遊郭の「音」を集めるのはちょっとどうなのかしら――というのはさておき、そこで彼が耳にしたのは女の子の泣き声、すわ! とばかりに駆けつけれて、泣いていた一人の禿を一生懸命なだめようとする善逸ですが、その彼の後ろに立つ一人の花魁が……
善逸の耳をして、声をかけられる直前まで全く気付かなかった相手は、人間ではなく鬼――いや上弦の鬼。しかし異常に口の悪い相手が泣いていた禿の耳を引きちぎれんばかりに掴んだ時――その腕を浮かんで手を離せというのが善逸という男であります。
先に述べた通り、この時点で相手が上弦の鬼と気付いていたにもかかわらず、それでも少女のために阻もうとする――そんな彼だからこそ、ヘタレでも女好きでも皆が愛するのでしょう。もっとも、裏拳一発で吹き飛ばされて気絶KOなのですが……
○吉原に潜み続けるもの
遡ること二日前、この花魁・蕨姫と対峙し、彼女の周囲で次々と人死にが起きることをなじる女将。それを鼻で笑い、ババア呼ばわりで睨めつける花魁に対し、女将は自分が子供の頃、吉原に昔から存在していた花魁「たち」、蕨姫と同様の特徴を持つ花魁たちと彼女の関係を問うのですが……。人間の間に潜む人外の存在を面と向かって問うのはやはりタブーというべきか、正体を現した蕨姫――上弦ノ陸・堕姫に空から投げ落とされて、女将は惨殺されるのでした。
そして部屋に戻った堕姫を待っていたのは伊達男姿の無惨――先日の猗窩座へのパワハラが嘘のように彼女を優しく褒め、これからも期待していると語る無惨と、先程の傲岸不遜ぶりが嘘のように頬を染め、乙女のように無惨に対する堕姫。美男美女の美しい語らいのようですが、これほど悍ましいものもないというべきでしょうか。にしてもこの様々な顔を持つ女怪を完璧に演じているのはさすが沢城みゆきであります。
そしていまに戻り、善逸を見て無惨の敵・鬼殺隊が現れたと喜ぶ堕姫。しかし(原作でもそうなんですが)禿がいるところで「皆殺して喰ってあげる」と嬉しそうにひとりごちるのはいかがなものか……(たぶんいつも言ってるんだろうなこういうこと)
○善逸への感謝、しかし……
そして今回、Cパートはオリジナルの描写――気絶していた善逸が目覚めたところに、彼に助けられた禿をはじめ、なんかどっかで見たような感じの三人娘がやってきて感謝の言葉を告げます。考えてみれば女の子の前で寝ないで格好良いところを善逸が見せたのはこれが初めてかなあ、と感慨深く思っていたら――ヒッ!
そういえば原作では堕姫に殴られて気絶した後、いつの間にか行方不明になってましたが……
あと、今回は出番の少なかった炭治郎が、異常に滑らかに花を生けるのに驚きました。家事に慣れているというレベルではない。
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