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2022.01.25

「鬼滅の刃」遊郭編 第六話「重なる記憶」/第七話「変貌」

 ヒノカミ神楽で堕姫を追い詰めたものの体力が付きた炭治郎に代わり、鬼として覚醒した?豆子が堕姫を圧倒する。しかし?豆子は暴走して人に襲いかかり、炭治郎は必死の思いで彼女を押さえるのだった。そこに現れた宇髄は一撃で堕姫の首を落とすが、その体から堕姫の兄・妓夫太郎が出現し……

 堕姫との対決が本格的に始まり、バトル中心の展開になるので数話分まとめて感想を書こうと思っていたら、もう大変なことになってきたアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』。基本的にストーリーや描写は原作そのままですが、その間を埋める演出が――特にアクションが、尋常ではないクオリティなのですから。

 まず第六話「重なる記憶」で描かれるのは、前話から引き続く炭治郎と堕姫の戦い。ヒノカミ神楽によって善戦する炭治郎に対し、堕姫は蚯蚓帯を体に戻してパワーアップ(というより元々の状態に戻った)。そして体中から放つ帯によって周囲の人といわず建物といわず切断して周囲は阿鼻叫喚の巷に。炭治郎も周囲の人間を庇って深手を負ったところで、勝ち誇って周囲の人々を蔑む堕姫ですが――ここで炭治郎の怒りゲージが振り切れて覚醒モードに入り、先程とはうって変わったヒノカミ神楽で堕姫を圧倒……

 と、まずこのシーケンスの縦横無尽に襲いかかる帯vsそれを迎え撃つ刀のアクションが凄まじいのですが、しかし何と言ってもテンションがあがるのは、ここで炭治郎の言葉とヒノカミ神楽に反応して、堕姫の中の無惨の記憶が反応するくだり。そこで登場する「剣士」――その名と素性はまだ明かされませんが、見るからに只者ではないその剣士を演じるのは井上和彦! 大ベテランながらいつになってもイケメンなその声は、納得のキャスティング。この先(本当に相当先ですが)の本格的な出番が楽しみです。

 さてこの後、加減を知らずに全力疾走しすぎて死にかけた炭治郎に代わり、第1話以来の出番となったのは?豆子ですが、ここからはvs炭治郎とは異なる意味で限界突破した戦い。帯で容赦なく脚を、胴を斬られた?豆子――と思いきや、彼女が瞬時に回復して堕姫の頭を蹴り潰す場面は、双方がそれぞれに美しいだけに、一層目を背けたくなるような凄まじさがあります。

 そしてその凄惨な戦いは続く第七話「変貌」でピークになります。脚を、腕を、そして首を切断されながらも、自らの血で体のパーツを繋ぎ、逆に爆血で堕姫の半身を焼き尽くす――この時、一瞬ながら原作以上に堕姫のトラウマを明確に描いているのが印象に残ります――という、鬼同士ならではの戦い、いや潰し合いは、残酷なシーンが少なくない本作においても屈指の、深夜枠でなければ絶対無理な描写であったと言うべきでしょうか。
(一方で、ぶっ飛ばした堕姫に空中で追いついて追い打ち攻撃などという、ドラゴンボールばりのアクションが飛び出すのも面白い)

 しかしこの直後、エキサイトしすぎて、近くにいた怪我人に襲い掛かりそうになる?豆子は何度見てもアウトで、話のわかる宇髄でなければその場で退治されてもおかしくない状況そうしたら義勇は切腹なわけで……
 それはさておき、ここで炭治郎が必死に?豆子を押さえている最中に飄然と現れ、炭治郎にツッコミを入れたのは、ようやく真の戦場に駆けつけた音柱・宇髄天元その人。堕姫の帯を一瞬の内に全断し、堕姫を目の前にしながら炭治郎と会話する余裕ぶり――と思いきや、堕姫も気づかぬうちに首を落としていた、というのは、わかりやすくも見事な強豪ムーブというべきでしょう。

 そしてここから堕姫がこれまでの悪女キャラから一転、お兄ちゃん連呼の妹キャラに変貌するのには驚きますが、ついにここで真の上弦の陸というべき妓夫太郎が出現。暗がりに転がった堕姫の胴体から出現する際の禍々しさ、そして今度は宇髄が一瞬のうちに斬られるという展開は、次から次へと目まぐるしく状況が変わるこの戦いの中でも、やはり強烈なインパクトがあります。

 しかしここからが宇髄の宇髄のアクションの真骨頂。青龍刀並みのサイズの二刀(鎖で繋がった点を活かしたアクションが映える)に体術、さらに爆破まで投入してのアクションは、気合の入った作画に支えられてまさに派手派手。これに対する妓夫太郎の方も、血のブーメランというべき血鬼術をCGで描くのは定番といえば定番ですが、宙で不気味に蠢く様は出色といえます。
 何よりも、原作では動きが凄まじすぎて一瞬一瞬を切り取った画的に感じられた部分を、その合間を補って更に凄まじいアクションとして見せるという、このアニメならではの魅力を、この第七話ラストの攻防からは存分に味あわせていただきました。

 しかし恐ろしいことにこれはまだ序の口、続く第八話ではさらに凄まじいアクションが――と言いたいところですが、さすがに3話分を一気に紹介するのは無理があったので、稿を改めたいと思います。


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