赤神諒『空貝 村上水軍の神姫』の解説を担当しました
本日(1/14)発売の『空貝 村上水軍の神姫』(赤神諒 講談社文庫)の解説を担当いたしました。瀬戸内海は大三島の鶴姫伝説を踏まえて描かれた一大ロマン、戦国のロミオとジュリエットの物語の文庫化であります。
時は16世紀半ば――武士たちの尊崇を集める大山祇神社の大祝を務めるとともに、大三島水軍を率いる大祝家。その姫である鶴姫は、美貌の巫女でありながらも自ら刀を取り、悪しき海賊を斬る姫武者でありました。
そんな大三島に襲来した中国の雄・大内義隆――その水軍を迎え撃った鶴姫の次兄・安房は敢えなく戦死。鶴姫は仇討ちに燃え、強引に陣代の座に就いて水軍を率いることになります。
そんな彼女を支えることとなったのは、安房の天才軍師として知られた美青年・越智安成。しかし鶴姫は、そんな安成を、兄を死なせた無能と毛嫌いします。
一方の安成も神妙を装いつつ、実は裏で鶴姫を――いや、大祝家を激しく憎む野望の男。かつて一族を滅ぼされた恨みを持つ彼は、復讐鬼と化して内側から大祝家を滅ぼさんとしていたのであります。
しかしそんな鶴姫と安成にも、全く予想できなかった運命が待ち受けていました。鬼鯱の異名を持つ大内水軍の猛将を相手取り、協力して戦いを繰り広げる二人。死線を越える中で心の繋がりが生まれた二人は、やがて強く惹かれ合うようになったのです。
そんな中でも迫る大内水軍の総攻撃。そしてかつて安成が巡らせた大祝家滅亡の策も独り歩きを続けて……
戦国時代、自ら鎧をまとって軍を率い、大内水軍を撃退する戦果を挙げたものの、その最中で恋人の越智安成を失い、辞世の句を残して海に漕ぎ出して消えたという大三島の鶴姫。
本作はその鶴姫の物語を踏まえつつも、仇敵同士の熱愛という要素を加え、ロミオとジュリエットばりの悲恋物語として成立したものであります。
と、実は本作は単行本発売時に、作者ご自身によるかなり詳しい解説がweb上に掲載(さらに現在は文庫版の解説もスタート)されていて、白状すると自分は何を書けば――と悩みました。
それでもまあ自分の大好きな作品だけに、いつものように好きに語らせていただこう――そう考えて、自分は読者として見た赤神作品の本質と、そしてそれに照らして、ベースとなった鶴姫物語から本作が踏み出した点について書かせていただきました。
何はともあれ、作者のファンはもちろんのこと、鶴姫に興味のある方、歴史もの好き、悲恋もの好き――一人でも多くの方に手にとっていただければと思います。
悲しいけれども、それだけで終わらない、熱い血潮の通った物語です。
『空貝 村上水軍の神姫』(赤神諒 講談社文庫) Amazon
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