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2022.01.05

岩崎陽子『浪漫狩り』第7巻 大団円 現在に繋がる過去を乗り越えて

 昭和初期を舞台に、考古学者にして埋蔵金盗掘指南の猿渡遼太郎と、陸軍特務が超古代文明の遺跡を巡り火花を散らす本作もいよいよ最終巻。友を救い出すため、暴走する軍を止めるため、そして人類を救うため――ついに中央アジアの中枢遺跡に辿り着いた猿渡たちを待つものとは……

 各地で出土する人知を超えた特徴を示すメダリオンを追い、陸軍特務と対峙してきた猿渡と仲間たち。その冒険はやがて富士近くに眠る遺跡に及んだ末、呉越同舟で猿渡たちと陸軍は共同で遺跡の謎に挑むことになります。
 しかしかつて超古代遺跡を巡る陰謀によって親友・那珂川を失った篠原少佐が暴走――那珂川の弟の那珂川少尉を神の知識の器に仕立て上げると、世界を終わらせると告げ、姿を消すのでした。

 莫大なエネルギーを秘めた地の経絡を制御し、地球の生殺与奪を手にするも等しい力を与える中枢遺跡。その力を用いようとする篠原少佐を阻み、那珂川少尉を取り戻すために、宿敵だった犬神の協力を得て、猿渡は中国大陸に渡ることにことになります。
 しかし既に先行している陸軍に対し、猿渡たちはあくまで追う立場。しかも遺跡の正確な位置もわからず、わかったとしても移動手段がありません。

 そこに思わぬ協力者が現れ、ついに中枢遺跡への道筋を掴んだ猿渡一行。そしてその前に現れた守護者たちもまた、猿渡と意外な繋がりを持っていたのであります。
 様々な人々の助けを得て、遺跡内部に踏み込む猿渡一行。しかし既に篠原少佐の手で起動を開始した遺跡の防衛機能に、猿渡たちは苦しめられることになります。

 遺跡の暴走が近づく中、真の遺跡の制御中枢の存在を知る猿渡。その驚くべき正体とは、そしてそれに対して猿渡は……


 というわけで丸々一冊、中枢遺跡を巡る最後の戦いが描かれるこの最終巻。前巻での怒涛の展開はそのまま、ここでも一気呵成に物語は結末に突き進んでいくことになります。
 しかし派手な戦いが描かれる一方で、その背後にあるのは、これまで猿渡が出会い、救ってきた人々との繋がりの存在。さらには盗掘屋として軽蔑していた犬神との、長年確執のあった父との和解という、骨太の人間ドラマの存在なのであります。

 そしてクライマックス、遺跡の核に突入した猿渡が見たもの――その「光景」には、この物語がこの時代を舞台に描かれた、その理由であり、必然性であったか!? と驚かされること請け合い。
 しかしあまりに絶望的なその光景を乗り越え、そこから猿渡の新たな決意、そしてタイトルに繋がっていく展開はまさに大団円――現在に繋がる過去を乗り越え、そして未来に繋げてきた物語に相応しい結末であると感じます。


 もっとも、さすがに単行本1冊、4話でクライマックスを描くというのは、いささか駆け足の印象があるのは否めないところではあります。
 特に守護者たちがあまりにもオールマイティな存在であったのと、那珂川少尉の覚醒がいささかあっけない――そしてこの両者は繋がっているのですが――のは、いかにも惜しかったと感じます。

 もちろんこの辺りは、巻末の余談漫画を見れば、ある意味無理もなかった――というよりも、よくぞこの状況からここまできっちり描いてみせたというべきでしょう。何よりも、クライマックスを1巻に収めたからこその、このスピード感、緊迫感であった――そう強く感じるのです。


 何はともあれ、昭和初期、宝探し、超古代文明、秘宝、そして男の友情――まさに「浪漫」というべきものが詰め込まれた、いやそれだけで構成されたような本作。物語の最初から最後の最後まで、存分に楽しませていただきました。
 『浪漫狩り』これにて完結であります。(といいつつ、『浪漫狩りZERO』も紹介しないと……)


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