『怪竜大決戦』 崩れゆく城塞 激突二大巨獣!
昨年の大晦日から三が日にかけて、東映時代劇YouTubeチャンネルで『怪竜大決戦』が公開されておりました。1966年公開のこの作品、松方弘樹を主役に、大友柳太朗を敵役に据え、特撮をふんだんに使った特撮時代劇であります。
邪悪な妖術使い・大蛇丸を従えた悪人・結城大乗の謀反によって乗っ取られた尾形家の城。何とか城外に逃れた若君・雷丸にも、大蛇丸が化身した大龍が迫ったその時、蟇道人の大鷲が彼を救うのでした。
以来、道人の弟子として育てられ、逞しく成人した雷丸。しかし彼を狙う大蛇丸の魔手が迫り、その戦いの最中に、雷丸は父を探す娘・綱手と出会うのでした。
そして自らの師であった道人を卑怯な手段で討ち取る大蛇丸。今際のきわの道人から大蝦蟇変化の術を与えられた雷丸は、自雷也と名乗り、両親の仇である大乗と大蛇丸を討つために旅に出ることになります。
しかし、大乗を裏切り自らが城主になろうと奸計を巡らす大蛇丸は、次々と自雷也に刺客を送り込みます。そしてその最中、綱手は自分が探す父こそ、大蛇丸だと知ってしまうのですが……
このあらすじからわかるように、本作のベースは、講談の児雷也豪傑譚に始まる、いわゆる児雷也もの。大蝦蟇を操る児雷也、大蛇を操る大蛇丸、大蛞蝓を操る綱手が活躍するこの物語は、その派手な趣向ゆえか、戦前から映画化されてきたものであります。
本作はその児雷也ものを、当時の最新技術でいわばリメイクしたものですが、その結果、いわゆる東映時代劇+怪獣もの的な趣きが生まれた作品です。
正直なところ、今の目から見れば合成技術はあまりにもプリミティブ(特に今回の配信は非常に映像状態が良いので粗が特に目立つ)なのですが――しかし松方弘樹の不敵な若武者ぶり、そして悪の妖術師といえばこの人感のある大友柳太朗の怪物ぶりが相まって、時代活劇としては純粋に楽しい本作。
さらに結城大乗を天津敏(といっても典型的なバカ殿ぶりで、精悍さゼロなのが残念)、蟇道人を金子信雄、さらに大蛇丸の配下ながら密かに自雷也と綱手を助ける老忍・百々兵衛を千葉敏郎が――と脇の面々も充実であります。
しかし何といっても本作の魅力は、クライマックスの文字通り「大決戦」にあることは間違いありません。
自雷也が迫っていることも、大蛇丸の暗躍も知らず、城内で宴に酔いしれる大乗――しかしふと気づけば、その乱痴気騒ぎを高みから睨めつける眼が、という、動と静の使い分けが素晴らしい大蝦蟇登場シーンから始まるこのクライマックス。
その巨体で城の屋根も、壁もものとはせずに突き崩しながら大蝦蟇は大乗一党を追い詰め、そしてついにただ一人になった大乗も、みっともなく命乞い→不意打ちという悪役ムーブも全く通じず自雷也に斬られるのですが――しかしここからが大決戦の本番です。
邪魔となる大乗が消え、残るは自雷也のみと、大蛇丸は大竜に――長い首がヌッと現れる姿が実に禍々しくインパクト十分――に化身。そして大蝦蟇が口から火を吹けば大竜は水を吐いて打ち消し、飛び道具では勝負がつかぬと見て正面からぶつかり合う二大巨獣!
――と、ここいわゆる怪獣プロレスになってしまうのはいささか残念ではあるのですが、しかしその合間に容赦なく城が破壊されていく様は凄まじいまでの迫力であります。
そしてついに追い詰められた大蝦蟇が城外に転落、その上に瓦礫が積もった上に大竜にのしかかられる辺り、城の周囲が本水を使っているだけに本気で心配になり、「おお……蝦蟇よ蝦蟇!」(それは蝦蟇違い――ではないような)と呻きたくなるほどです。
しかしそこに綱手が祖母(母の母)である蜘蛛婆から託された髪飾りを投じれば、空から現れたるは大蜘蛛! 大蜘蛛の吐く糸に絡まれ、さしもの大竜も力を失い……
と、原典では大蛞蝓であったものが大蜘蛛になっているのは、まあ色々と理由があると思いますし、ほとんど動かないのは残念ですが――これはこれで見栄えという点では正しかったのかもしれません。
重ねて申し上げれば、技術という点ではさすがに古めかしい部分は目立つものの、クライマックスのミニチュアワークは、現在見ても凄まじいものがある本作。
そして骨格となる時代劇はいうまでもなく東映のお家芸と、本作の流れは、ここに登場した巨獣たちが流用された『仮面の忍者赤影』へと繋がっていくと考えればよいかと思いますが――それはさておくとしても、新年早々に理屈抜きに楽しむにはピッタリの作品でした。
『怪竜大決戦』(東映ビデオ DVDソフト) Amazon
![]() |
Tweet |
|
| 固定リンク