「コミック乱ツインズ」2022年2月号(その二)
「コミック乱ツインズ」2022年2月号の紹介の後半であります。
『勘定吟味役異聞』(漫画:かどたひろし/原作:上田秀人)
今回から原作第7巻に当たる「遺恨の譜」編に突入した本作、いよいよクライマックスも間近であります。前話、「暁光の断」編のラストで吉宗暗殺計画を未然に阻止した(そして何だかすごい褒美をもらうことになった)聡四郎ですが、冒頭で語られるのは、前回ちょっとわかりにくかった紀文の行動の真意であります。
自分で暗殺を手配しておきながら自分でそれを破綻させる――読者の側には紀文の意図は理解できますが、確かに聡四郎の側は首を傾げることだらけでしょう。しかしその後も紀文の暗躍は続き、絵島事件の打撃で権力の座から滑り落ちかけている間部越前守に接近、金で縛らんとしている様子。しかし本当に恐るべきは、それと同時に配下に出した指示なのですが……
一方、聡四郎はといえば、新たに御広敷伊賀者の襲撃を受け、よそに目を向けている余裕もなくなってきた状態。にしても色々なところから恨みを受けて、今回聡四郎が狙われたのは誰の差し金でしたっけ、と混乱するほどです。
そんな中、以前宿敵との死闘に勝利はしたものの、片腕の筋を絶たれ、「剣術遣い」として再生するために再修行を宣言した師・浅山一伝斎と道場で向き合う聡四郎。そこで素人目には以前と変わらぬ凄まじい打ち込みを放ったかに見えた一伝斎ですが――という辺りに剣の道の厳しさが感じられますが、その一方で聡四郎を案じる一伝斎が熱い。江戸城内の陰謀も気になりますが、こちらの師弟の行方も大いに気になるところであります。
しかし、新型銃を碌に見分もせず捨てたことを以て吉宗の器を断じる紀文はさすがというべきでしょうか……
『ビジャの女王』(森秀樹)
蒙古軍を前に文字通り孤軍奮闘するビジャの戦いもいよいよ佳境に入った印象のある本作。裏切りを画策する宰相・ジファルの(ストレートすぎる)奸計により城壁から転落、負傷した末に蒙古軍の捕虜となったインド墨者・ブブが、脱出に向けて動き始めます。
勇者を好む蒙古人の風習によってとりあえずの命の危険はないものの、腕枷を付けられた囚われ人のブブ。蒙古側は、かつて殺された兵たちの服が奪われていたことから内部に墨者たちが潜入したことを予測、彼らがブブ奪還に現れるのではないかと警戒するのですが――しかし彼らは知らなかったのです。想像を絶するもう一人(?)の墨者の存在を……
というわけで、作中の人物のほとんどの想像を絶する存在ながら、読者である我々にとっては彼(?)しかいない、と思っていたキャラが大活躍。これはもう蒙古軍が可哀想になるくらいですが――しかしまだ脱出できたわけではありません。
ブブを信じたオッド姫の決断の結果は――次回に続きます。
『カムヤライド』(久正人)
あまりに残酷な記憶を取り戻し、己の中に隠された「神殺し」の力に目覚めた末に異形に変じたヤマトタケル。しかし彼は本当にかつての彼なのか――?
という何とも気になる展開から続いた今回の冒頭では、自分たちが求めるニ=ギの骨が鳴動するのを目の当たりにして、天津神たちが異変を感じ取ることになります。これまでの展開を見れば、失われたニ=ギの肉体こそは、ヤマトオオクニタマの素体であり、今はヤマトタケルの中にあることは明白ですが……
しかし続いて描かれるのは、熊野タイジ浜で国津神と戦うオトタチバナと黒盾隊の姿であります。以前登場した時は民を守ったモンコを逃し、オシロワケ大王の命を受けた近衛兵と一触即発だった彼女たちですが、その後、国津神百体を倒すまで追放という処分となったらしく、今は各地で「怪獣退治の専門家」状態とのこと。
今日もこの浜に出現した数多くの国津神を退治していたオトタチバナですが、そこに現れた新たな強敵に大苦戦。しかしそこに登場したのは……
ようやく神話のカップルが誕生する予感ですが、しかしこの出会いが吉と出るか凶と出るか――どう考えてもただで済むとは思えません。
次号は特別読切として有賀照人&富沢義彦の『玉転師』が掲載とのこと。どのような内容かまだわかりませんが、これは要チェックであります。
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