椎橋寛『岩元先輩ノ推薦』第3巻 開戦、日英能力者大戦! そして駆けつける「後輩」
1910年代、陸軍のエリート養成機関・栖鳳中学校に、各地から能力者を「推薦」する岩元先輩と後輩たちの冒険と戦いを描くユニークな物語の第3巻で描かれるのは、いよいよその動きを本格化させた英国魔女軍団と栖鳳中学校の学生たちの激突。日英能力者たちの激突の行方は……
栖鳳中学校の書記長を務める3年生・岩元胡堂――自らも炎を操る能力者である彼は、これまで日本各地で起きる超常現象の調査を行い、そしてその現象の原因である能力者を学園に「推薦」してきました。
栖鳳中学校の「隔離施設」に集まった岩元の後輩たち=能力者を保護し、育成するために、岩元は時に学校の方針に逆らってまでも孤独な戦いを続けてきたのであります。
そんな中、岩元が命じられた、さる料亭で起きた大量殺傷事件の調査。ある能力者が引き起こしたその事件の背後には、英国からやって来た「魔女」――英国の能力者の存在がありました。
後輩の原町、天羽とともにその魔女――水使いのネプチューン・ウォーターガンを辛くも倒した岩元ですが、これは前哨戦に過ぎず……
と、いずれ始まるであろうと思われた能力バトルの敵として出現した英国「魔女」軍団。魔女術(ウィッチクラフト)を行うのが女性に限らないように、「魔女」といっても男性も数多く含まれているというのはさておき――日本の能力者を擁するのが陸軍の養成学校であるのに対し、英国はいわゆる「魔法学校」(制服もソレっぽい)というのは、ある意味納得であります。
さて、彼ら魔女軍団の狙いは、日本が擁する能力者たちを捕らえ、あるいは仲間に引き入れること。その最初のターゲットとなったのが、埼玉の山中で石仏を彫り続ける仏師の少年・城戸石英であります。
実は彼の能力は「複製」――己が手にしたものを自在に複製するという、軍事利用されれば途方もない価値を持ちかねないもの。もっとも彼はあくまでもその力を、己が求める石仏作りのために使っている――大量に生まれたその石仏が、羅漢像で有名な埼玉の某寺院に運ばれているというのが愉快――のですが、そんな彼の意図とは関係なしに、魔女たちは襲いかかってくるのです。
その動きを察知して彼の保護に向かった岩元と原町ですが、時既に遅く、英国からやって来た四人の魔女によって城戸は確保された後。
敵の一番手、シャボン玉使いのクリスタルはあっさり撃破したものの、敵のリーダー格と思しきコイン使いのイグニィには(主に原町が)苦戦――さらに足止め役の第三の魔女、茨使いのローズマリィは手強く、岩元はついに目の前で同胞を奪われるという屈辱を味わうことになるのか!? というところで、新たな後輩が駆けつけた!
能力者もの、というかトーナメントバトルもので、時に勝敗が決する瞬間以上に盛り上がる場面があるとすれば、それは新たな戦士が参加、その能力を発揮する時ではないでしょうか。特にそれが味方側が苦戦していた時であれば尚更であります。
この第3巻で描かれるのはまさにその展開なのですが、しかし参戦するのが、予想もしなかったような人物というのが実に本作らしいというべきでしょう。
この人物自体は既に第1巻で登場済み、その能力の一端も既に見せているのですが――しかしどう見ても戦闘向きではない(というより何に向いているのかさっぱりわからない)能力のため、正直ノーマーク。しかしまさかその能力をこう使うか! という展開には読んでいて思わずニッコリであります。
ちょっと便利すぎる気もしますが、まあデビュー戦なのですからそれも良しでしょう(決め台詞が能力と相まって実に気持ちいいのです)。
もっとも、前巻でも述べたように、第1巻にあった奇現象ハンター、ゴーストハンター的側面が完全になくなったのは、個人的には非常に残念ではあるのですが……
何はともあれ、ついに始まった日英能力者大戦。まだまだ双方どのような能力者がいるかはわかりませんが、日本側は何に役立つのかわかりにくい――あるいは直接のバトルに使いにくい――「後輩」が多いだけに、この先登場する顔ぶれが楽しみであることは間違いありません。
そしてこの巻のラストのエピソードで登場する新たな能力者は、また少々意外な設定なのですが、さて――一筋縄ではいかない展開を期待したいと思います。
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