わらいなく『ZINGNIZE』第7巻 ついに結集、江戸の三甚内!
死闘の最中に乱入した伊達軍により状況が混迷を深める中で、炎の巨人と化して暴走する風魔小太郎。小太郎に挑むは、高坂・鳶沢・庄司の江戸の三甚内――そしてもはや完全に人間を捨ててしまった小太郎に対する高坂甚内の最後の秘術とは!? いよいよ決戦の時であります。
死人の軍勢から愛するくノ一・菊を救うため、蘇った太田道灌を味方につけて小太郎に挑む高坂甚内。唯一の弱点である高坂甚内の毒を、自らが燃え上がることで克服した小太郎ですが、そこに重火器を携えた中田譲治×2と岡本美登――ではなく伊達政宗と伊達成実、片倉小十郎が乱入、一気に状況は混迷の度合いを深めることとなります。
さらに、小太郎の不死身の肉体の源であった足柄山の返魂樹が別働隊に焼かれ、焦る小太郎はこの場を離脱しようとするのですが――もちろん高坂甚内がそれを見逃すはずもありません。
駆けつけた庄司甚内を連れ、小太郎を追う高坂甚内。しかし最後の力を振り絞った小太郎は二人を突き放して逃走、残された二人の前に現れたのは鳶沢甚内で……
というところで、ついに高坂・鳶沢・庄司の江戸の三甚内が集結することとなった本作。斬っても燃やしても、毒でももはや死なない怪物に挑むには、超絶の技を持つ三人が手を組むしかない!
といっても、どうすればトドメをさせるの!? というのがここまで本作を読んできた人間の正直な感想なのですが――なるほど、ここまで無茶苦茶な怪物として描いておいて、ここはこうくるか、という理詰め(?)の展開には、やられた! というほかありません。
(と思っていたら、この後に実にしょうもない展開があるのも、実に本作らしい)
そして走馬灯というべきか――追い詰められた小太郎が思い出すのは、かつて秀吉の小田原攻めで北条が敗れ去った際の北条氏政との会話と、その後大坂城に乗り込んで豊臣秀吉と交わした会話。
秀吉を殺してきてやるという小太郎に氏政が何と答えたか、そしてその氏政亡き後、自分を殺そうとする小太郎に秀吉が何と答えたか――ここで示されるのは、彼ら戦国武将たちと小太郎の、人の上に立ついくさ人と彼らに使われる「狗」の、残酷なまでの違いであります。
それは身分や血ではなく、心の有り様――どれほど超絶の肉体的な力を持とうとも、決して埋められないものの存在を知った時、小太郎は何を思ったのか? その無念こそが、これまでの小太郎の暴走、そして人の身を捨ててまで生にしがみつく様の根底にあることは間違いないでしょう。
そして以前(第4巻)、小太郎は菊に秀吉との出会いの様を語りましたが、そこでの内容と今回の違いは、矛盾というものではなく、小太郎をしてそう語らざるを得なかったのだろうと――そう感じさせられます。
そしてそんな想いが暴走を続け、ラスボス形態というか、もはや怪獣と化した小太郎。もうここまでくると鳶沢甚内の重火器も通じない存在と化した小太郎に成すすべはあるのか、というところで高坂甚内が繰り出す「奥の手」とは……
前巻飛び出した「七つの五右衛門忍法」というパワーワードを遥かに超えるとんでもない切り札にはもはや愕然、今度の今度こそは決着か!?
というところで、物語は続くのですが――その先に、小太郎と甚内たちの違いが、甚内たちが単なる「狗」でないことが描かれることを強く期待する次第です。
(もちろん、ここに至るまでに既に描かれているといえば描かれてはいる気もしますが……)
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