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2022.03.23

出口真人『前田慶次かぶき旅』第9巻 いくさ人&示現流剣客団を待つ意外な強敵!?

 訪れた先の薩摩で、島津義弘や東豪重位らと意気投合した慶次一行。しかし島津を己の天下統一の障害と考えた家康の策略で、島津は思わぬ窮地に陥ることになります。この事態を解決すべく立ち上がった慶次たちですが、その前に強敵が立ち塞がって……

 九州でのあばれ旅の末に薩摩に到着、島津義弘と対面した慶次たち。島左近と義弘の感動の再会も挟みつつ、すっかり意気投合した面々ですが、そこに家康の奸計が襲いかかることになります。

 そもそも本作の舞台となるのは関ヶ原の戦直後。家康が征夷大将軍になったという報に、義久と旧豊臣方勢が揺れるというくだりを見て、そういえばそんな時代だったか――と思い出しましたが、何はともあれ、家康が天下獲りへの野望を隠さなかった時代であります。
 そんな家康にとって目の上のこぶといえば島津。もっとも本作の島津は、義弘だけでなく慶次・宗茂・左近という西軍生き残り(というか死んだはずのも含めて)オールスター状態なのですから、警戒しない方がおかしいのですが――この巻では、ついに家康お得意の謀略が牙を剥くことになります。


 突如何者かに拉致された、太守・島津義久の主治医・許三官(許儀後)。実は許三官には、秀吉の朝鮮出兵時に、秀吉の狙いを明に密かに伝え、しかしそれが露見して殺されかけた過去があったのです。
 その時には家康が秀吉にとりなして難を逃れたのですが――今になって家康はその事実を利用し、九州の大名たちに、島津が裏切り者という印象を植え付けようとしていたのであります。

 実はこの許三官の行動は史実。もっとも、そこに島津の意図がどこまで働いていたかはわかりませんが――いずれにせよ、この点を物語に取り入れた上で、家康の謀略の材料として使ってくるというのは、実に面白い着眼点と感じます。
 もっとも、義久はバレてもあまり気にしていないというかスケールがデカすぎるのですが……(しかし義久がここで言うとおりの行動を取ったら、それはそれで慶次は怒ると思います)

 とはいえ、ここで家康の企みを放置しておくわけにはいきません。かくて東郷重位と夕月師弟をはじめとする示現流剣士団は、決死隊として徳川配下となった武田忍軍が潜むルソン船に突入することになります。
 もちろん、そんな状況を知った慶次たちが黙っているはずもありません。慶次がノリノリで先陣を切ったのに加え、最近は(というか最初から)面白キャラ扱いだったエンリケも海賊の本領を発揮、一堂大暴れ――と思いきや、今回の敵は意外な強敵だったのであります。

 基本的によほどのネームドキャラでない限り、慶次無双で一蹴される本作。しかも陰働き主体の忍びであれば、相手になるはずがない――と思いきや、この武田忍びの面々はやたらとゴツい上に戦力が高く、しかもクレバーなのであります。
 特に頭目は、慶次ら伝説のスーパーいくさびと人の力を理解した上で、それに対応した戦法を使ってくるという難敵なのです。

 もっとも、この忍びたちに相打ち覚悟の火計を仕掛けられても、「これはまさに焼け落ちる城に敵将の首を取りに行く要領じゃな!!」とか宗茂が言い出すように、いくさ人側はいくさ人側で普通に適応していて、本当にたちが悪いのですが……


 かくてこの巻のメインとなるいくさ人&示現流剣士団vs武田忍びの死闘は、先が読めない乱戦となって想像以上に盛り上がるのですが――ラストには、ある出来事が待ち受けています。
 この展開は、身も蓋もないことをいってしまえば、読者としてはすぐに予想できるものなのですが――しかしもちろん、これは慶次に大きな衝撃を与えることになります。

 それがこの先慶次の旅にいかなる影響を与えるのか、それはまだわかりません。そしてこの先、慶次がいかなる行動を取るのかもまた……


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