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2022.04.22

野田サトル『ゴールデンカムイ』第29巻 解かれたなぞ そして最終決戦開始!

 連載の方はいよいよ残すところあと一話、読者が全員固唾を呑んでいる『ゴールデンカムイ』。全話をネット上で一挙公開という思い切ったキャンペーンも話題ですが、それでも欲しい単行本の方は、本書を入れて残り三巻であります。ついに明かされるアイヌの黄金の行方とは、そして最終決戦の行方は……

 揃った刺青人皮から、ついに刺青の秘密を解き明かしたアシリパと鶴見。その一方で、杉元と菊田、そして尾形の弟・花沢勇作を巡る過去の因縁が語られ、思わぬ形で杉元と鶴見がすれ違っていたことが描かれました。
 そして過去も現在も、全ての因縁が集う黄金の在処こそは五稜郭だった――と判明したところで、物語の舞台は最後の地・函館に移ることになります。

 冒頭こそ焼きイカに舌鼓をうつヒマもありましたが(もしかしなくても最後のグルメか……)、時間的に余裕があるかと思いきや、既に第七師団は各地から五稜郭に集結を開始していたことを知った杉元たち。

 しかしまだ金塊の正確な隠し場所もわからず、しかも見つけ出しても分量的にすぐ運び出すのは不可能というほかありません。やむなく五稜郭に篭城を決意したものの、戦力的にさすがに無茶ではと思いきや、そこにソフィアとパルチザンの猛者たちがやってくる――という冒頭部分から、既に痺れる展開であります。
(そして同時に尾形と頭巾ちゃんも同時に五稜郭に向かっているのもまた……)

 そんな開戦目前でも、なおも一行は金塊を探し続け、ついに厳重に梱包された品物をアシリパは見つけるのですが、その正体はなんと――なるほど、こう来たか! と唸らされるものでありました。

 確かに白石たちがガクッとくるのもわかるのですが、しかし戦わずしてアイヌが自分たちの文化を守る手段として、これ以上のものはないと感じます。そして当時の状況からして、決してあり得ないものではないというのがまた心憎い。
 そしてまた、鶴見が呪いとして放った言葉を、アシリパが自分たちへの救いとして受け止め直すのもまた、グッとくるところであります。
(もちろん、実際にはそうなってはいないという現実はあるのですが、大事なのはこの物語の時点で、物語の中で成立し得る希望であったということでしょう)


 と、一気に大団円ムードが高まったところで、いきなりそれをぶち壊しにする砲弾の雨。なんと駆逐艦まで持ち出してきた第七師団の攻撃開始で、否応なしに最終決戦が始まることとなります。
 パルチザンを加えても圧倒的な戦力差がある中で、いかにして杉元は、いや土方は持ちこたえようとするのか? ここで永倉が、そして門倉が、いかにもらしいあるいはらしくない動きでそれぞれ活躍するのもまた、グッと決戦ムードを感じさせるところです。
(それにしても永倉、史実との絡みでここで早々に脱落するかと思いきや……)

 そしてその一方で、五稜郭に隠されたものに、いわばもう一段奥があることが明かされることになります。そのきっかけも実にイイのですが、ここで土方の回想から――全土方ファンの脳に刻み込まれるパワーワード「爽やかニシパ」とともに――彼の真意が明かされるのも、これまたグッときます。
 初登場時はもうちょっと裏がありそうなキャラクターに感じられたものの、しかしやっぱり爽やかニシパは義の人だった! というのは、やはりファンには嬉しいものであります。


 かくてついに最初の目的をはたした杉元とアシリパ。しかし純粋に喜ぶ杉元に対して、アシリパの目に浮かぶものは、喜びだけのようには見えません。そしてそんな人々の想いを呑みこむように、ついに描き下ろしで真の目的(用途?)を明らかにした鶴見の号令一下、第七師団の突撃が始まることになります。

 敵も味方もあっけなく斃れていく中も降り注ぐ艦砲射撃。対して函館山に隠された土方の奥の手とは――その意外かつ痛快な正体が明らかになったところで、この巻は幕となります。
 残すところはわずか二巻、最終決戦はここからが本番であります。


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