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2022.05.18

「コミック乱ツインズ」2022年6月号(その二)

 「コミック乱ツインズ」2022年6月号の紹介の続きです。

『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 今回はちょっといつもと違う、玄馬主人公回ともいうべき内容。水城家の隠居(聡四郎の父)の命で、水城家の新たな所領の状況を確認しに行った玄馬が、年貢をお目こぼししてもらおうとする名主から接待攻めに――と、何やら意外な展開であります。それも食べ物だけでなく、何と艶っぽい方面まで……

 もちろんそんな誘惑に負けず、毅然としてこれを跳ね除ける玄馬ですが、単なる拒絶ではなく、その理由がまた彼らしく一途で爽やかなもの。逆に誘惑してきたほうが心から絆されてしまう辺り、これが玄馬という若武者の魅力でしょう(そして聡四郎はさらに責任重大に……)
 しかし玄馬の活躍はそれだけではありません。旅の帰路に謎の刺客たちに襲われる玄馬ですが、金で雇われた連中に遅れを取る彼ではありません。まさに一閃というべき彼の殺陣は、聡四郎ともまた異なる迫力で目を奪われます。

 そしてその刺客を送り込んだのは紀伊国屋配下に使嗾された間部家ですが――しかしそんな無駄なことをしている間に、紀伊国屋の方は将軍家継暗殺のための策を巡らせているのですから、やはり格が違うというべきでしょうか。


 まだまだ紹介したい作品はあるのですが、何ぶん大変な数なので、ちょっと短めで失礼します。


『列士満』(松本次郎)
 『いちげき』を完結させた作者の次なる作品は、やはり幕末に戦った、武士ならざる身の者――幕府の陸軍歩兵隊を描く物語。その第一回では、彼らの陣である水戸天狗隊討伐が描かれるのですが、これが逆に夜襲を受けて這々の体で逃げ惑うことに……
 というわけで格好良くない連中が泥臭く奮闘する様がさすがとしか言いようのない本作。状況説明がほとんど全くなしで始まるのでついて行けない人もいるのでは――とちょっと心配になりますが、互いに撃ち合った後に敵味方でスコスコ弾詰めしているシーンの妙なおかしさが印象に残ります。
(あと「本編に於いても史実に於いても全く無名のこの男」という表現)


『雑兵物語 明日はどっちへ』(やまさき拓味)
 前回は本能寺の変が描かれましたが、そこで思わぬ相手を斃すことになった捨丸と春が、今回なりゆきから加わることとなったのは、瀬田城城主・山岡景隆の重臣・巨樹賢明の下。民百姓のことを重んじ、血を流さずとも戦は出来るはずという信念で、明智軍に談判に向かう賢明ですが……
 瀬田城攻防戦という地味な史実を題材としつつも、そこで無惨に流された血を克明に描いてみせる今回。「大将ッ 戦は血を流すものだぜッ」という最高に格好良い台詞とともに身を張った捨丸の行動が、ある史実に繋がるクライマックスには痺れます。しかし今回の結末は、作品自体の終わりに繋がりかねないものでしたが、さて……


『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
 仇敵・島村盛実と妻の父・中山信正を共に討つように命じられた直家。まあ直家的に答えは目に見えているわけですが――そこに至るまでの脳内まで目に見える形で描いてしまうのには脱帽です。
 しかし正面からでは苦戦必至の相手を片付けるのに直家が選んだ手段は――これまた目に見えているもの。しかしその結果が作中でどのように描かれることになるのか、大いに気になります。


『玉転師』(有賀照人&富沢義彦)
 女を磨いた上で高く売る、玉転がしならぬ玉転師の活躍を描く特別読切第二弾、今回磨く相手は夜鷹(だけ)ではなく――という変化球が楽しい展開です。
 主人公チームも磨く相手も、幾人も登場する女性たちそれぞれの表情も印象に残りますが(特にラスト一ページ前のあるコマ!)、もう一人、絶対あの人だろうと思っていたらやっぱりそうだったあの人も、別の意味で印象に残るのでした。


 次号は『そば屋幻庵』が登場のほか、新連載で『不便で素敵な江戸の町』(はしもとみつお)と『そぞろ源内 大江戸さぐり控え帳』(叶精作)がスタート。その代わり、『勘定吟味役異聞』『暁の犬』『カムヤライド』はお休みなのは残念……


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