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2022.05.03

岩崎陽子『無頼 魔都覚醒』第1巻 天海外法陣! 水晶髑髏! 第二シリーズスタート

 岩崎陽子が斎藤一を主人公に描く新選組漫画『無頼』の第二シリーズの第一巻であります。物語のテイストは第一シリーズの冒頭にグッと近づき、斎藤と沖田は、謎の天海外法陣と水晶髑髏を巡る争いに巻き込まれることになります。京都の封印が解かれる時、はたして何が起きるというのか……

 芹沢鴨の粛清など紆余曲折を経つつも、近藤勇の元に団結した新選組。その名を慕って様々な者たちが集まりつつある一方で、隊としては具体的な成果を挙げることができず、隊士の間には徐々に不安が広がりつつありました。が、そこに奇怪な噂が次々と飛び込んでくることになります。
 相次ぐ新選組の怪我人の陰の呪詛、薪炭商・桝屋の周りで目撃されたという蝙蝠男、屯所近くの空き家で目撃された怪火――いずれの噂にも疑いの目を向けながらも、浪士が潜んでいてはと、件の空き家に調査に向かった斎藤は、そこで蝙蝠を思わせる黒い西洋服をまとった男と出会うのでした。

 そんな中、市内で密偵を行っていた最中に「京都封じ」「天海外法陣」という謎の言葉を聞きつけてきた山崎。一方斎藤は、謎の水晶でできた髑髏を手に逃走した浪士を追うも、浪士は行く手に現れた謎の武士に斬られるのですが――謎の武士の素顔が、自分のよく見知った相手であったことに、大きな衝撃を受けるのでした。

 そして斎藤と沖田の前にあの水晶髑髏片手に現れた西洋服の男――平賀は、二人に自分の手伝いをするように呼びかけ……


 新選組版Xファイルといった赴きで、超常現象や伝奇的要素をふんだんに取り入れてスタートした前作『無頼 BURAI』。しかし物語が進むに連れて、そうした要素はフェードアウトし、歴史ものとしての顔が全面に押し出されることとなりました。
 もちろんそれはそれで斎藤と沖田の絆など、本作ならではの要素を、作者ならではの美麗な画で読むことができたので不満はないのですが、やはり(私のような人間には)一抹の寂しさがあったのは事実であります。

 さて、前作は芹沢鴨の粛清(と、それに対する斎藤の屈託とその解消)を描いて終わりましたが、もちろん新選組にとってそれはあくまでも最初の一区切りにすぎません。
 かくて本作ではその後の新選組が描かれるのですが――これが副題に示されているように、嬉しいことにこれまで以上に伝奇色濃厚な内容なのです。

 謎の黒マントの医師・平賀深雪、京都封じの天海外法陣、その鍵となる謎の水晶髑髏、斎藤の隠された出自――と、もう嬉しくなってしまうようなガジェットと展開が目白押し。さらに新たな宿敵としてあの幕末四大人斬りの一人・河上彦斎(もちろん白皙の美形)が登場、沖田と激突するのですからたまらないのです。

 もちろん新選組要素についても言うまでもありません。この巻の舞台となっているのは、芹沢粛清から池田屋事件までのある意味大きな事件がなかった時期。その時期特有の隊士たちの倦怠や動揺を物語に取り込むことにより、土方の言葉を借りればまだ馬のホネだった新選組の姿を、ここでは巧みに浮き彫りにしていると感じます。

 もちろんそんな時期だからといって、怪しげな天海の京都封じ探しに斎藤たちが巻き込まれるのは飛躍した展開にも見えるのですが、そこにきっちり伝奇的エクスキューズが入っているのも嬉しいところであります。
 そして物語のクライマックスにおいて、ついにその妖異極まりない姿を顕わにした封印の門。その封印が――という展開も、ビジュアルも相まって非常に印象的な名場面と感じます。


 その一方で、あの「桝屋」が登場したり、長州浪士たちが怪しげな動きを見せていたりと、この後の展開の準備も着々と進められているこの巻(そして沖田の体調も……)。
 いよいよ次巻では池田屋事件が描かれ、この『無頼』という物語の一つのクライマックスを迎えるのですが――そちらについてはまた次の機会に。

(そしてまあ、次巻が最終巻ではあるのですが……)


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