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2022.06.24

安田剛士『青のミブロ』第3巻 対決、五人の暗殺者 正義vs正義!?

 新選組に加わった京の三人の少年の目を通じて描かれる異色の新選組伝の第三巻であります。会津藩の者ばかりを狙う辻斬り五人を追うことになった壬生浪士組(ミブロ)。その一員として下手人を追うにおとはじめですが、逆に待ち伏せを受けて窮地に陥ります。はたして反撃の機会は……

 同じ地元からミブロに加わった少年である太郎、そしてはじめと、紆余曲折はありながらも距離を縮めてきたにお。そんな中、芹沢・近藤以下ミブロの面々は、京都守護職たる会津藩藩主・松平容保と対面の機会を得るのですが――そこで会津藩から、会津藩士ばかりを狙い、その目を抉っていくという暗殺者退治を依頼されることになります。

 ミブロの面々が五人組だという彼らを捕らえるべく腕を撫す一方で、におとはじめはこの暗殺者に対して情報を持っているらしい大店の跡取りの少年・世都と対面。しかしその帰りに、暗殺者に待ち伏せを受けて……

 しかし、におたちが子供と見て説得にかかる暗殺者。隣の清国のように、いまこの国が外国に狙われていること、そしてミブロの面々がそれをにおたちに教えず、無知につけこんでいると語る暗殺者、いや倒幕の志士ですが――しかしそれでにおが退くはずもありません。
 他の四人の情報を聞き出すため、無謀にも殺さず捕らえると言い出すにおですが、何とそこに暗殺者がもう一人出現。はじめがそちらと対峙している間に、におは最初の一人と対峙するものの、到底敵うべくもなく……

 というわけで、単なる破落戸や悪党ではなく、ある意味自分の思想、自分の正義を持つ相手と、初めて対峙することとなったにお。しかし思想――とまではいえないまでも、自分自身の正義という点でははっきりと自己を確立しているのがにおというキャラクターの特徴であり強みであります。

 たとえ一見正論を言っているようでいても、自分よりも遥かに上の腕前であっても、自分自身の正義と照らして、偽りや矛盾があれば絶対に屈しない――そんなにおの姿勢は、ここでも崩れることはありません。
 ありませんが、それでも敵わない相手は敵わないわけで――この辺り、一歩間違えればにおが口先だけの理想論キャラになってしまうのが悩ましいところですが、しかしそこをフォローするのは兄貴分たちの役目というところでしょうか。

 その兄貴分である沖田と土方の姿勢――におのことを否定するのでも矯めようとするのでもなく、彼の方向性を受け止め、伸ばそうという姿は、理想の先輩像であることは間違いありません。
 そしてそれを受けて改めて自分の原点を確かめ、まだまだ未熟で八方破れながらも、なおも前に進もうとするにおの姿も、青春ものの主人公としてみれば納得いくものがあります。

 さらに、そんなにおのことを口では散々言いながらも、その最大の長所がどこにあるかを直感的に認め、一度は及ばなかった相手を前に自分自身の真の力を見せるはじめの姿も、実にイイ。
 そして近藤も芹沢も、それぞれ「らしさ」を見せて暗殺者を対峙し、そしてラストはオールスターキャストを揃えつつも、近藤の信頼の下、におが一皮むけた強さを見せる――と、実にいい形で五人の暗殺者編は決着することになります。


 正直なところ、先に述べたようなにおの良くも悪くも青臭いキャラクターは、読者によって好き嫌いがハッキリ出るものだと感じます。
 また、時にミブロの面々のキャラクターが賑やかすぎて、物語の枠をはみ出して暴走しそうな危なっかしさもあるのですが――それでも長所短所併せ持った本作の空気は実に楽しく、その空気にもっと触れてみたいと思わされるのは、間違いがないところではあります。

 青春ものとしての新選組をどこまで貫くことができるか――この先の展開を待ちたいと思います。


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