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2022.06.15

久正人『カムヤライド』第7巻 真古事記の地獄 第三のヒーロー誕生!?

 古墳時代の変身ヒーローの活躍を描く本作も、気がつけば早くも第7巻。この巻のメインとして表紙を飾るのは、この巻より登場の新ヒーロー(?)であります。その誕生の鍵を握る真古事記とは、そしてそれがもたらす地獄のような真実とは……

 モンコ/カムヤライドが新たな力を得て復活した一方で、それぞれの思惑を秘めて動く各勢力。そんな中でヤマトタケルことオウスの皇子は、父・オシロワケの命で、兄・オオウスとともに伊勢に向かうことになります。
 そこで待っていた叔母・ヤマトヒメが二人に見せるのは、彼女がヤマトオオクニタマと呼ぶ巨大な骸骨で……

 という衝撃的なヒキで終わった前巻ですが、この巻でヤマトヒメから語られるヤマトオオクニタマにまつわる真実――いわば真古事記は、さらなる衝撃をもたらします。

 200年前の天孫降臨――天から落ちてきた「もの」の落下時の被害、そして汚染された土から生まれた国津神たちによって、壊滅的な打撃を受けた日向のヤマト族。最後の手段として、落下で生まれた穴の探索を行ったヤマト族は、落ちてきた「もの」の骨と肉を発見、その肉で巨人を生み出し、後の初代大王・イワレビコが乗り込んだのであります。

 そしてその巨人・ヤマトオオクニタマは国津神たちを蹴散らして東征を続け、やがてヤマトの地で新たな国を作った……
 しかしそれで終わったわけではありませんでした。ヤマトオオクニタマの――それに用いた「肉」の呪いか、イワレビコとその子孫八代(欠史八代……)は人ではなくなり、先々代の大王の代になって、ようやくその影響はなくなったのです。

 しかし今度は各地で国津神の復活などの変事が発生、あの「肉」を使い、神を殺す――しかし後代まで続く呪いを防ぐ新兵器の開発計画が、それも二つ進められたのです。
 その一つは、「肉」で鎧を作り、それを人に纏わせる計画――と、ここで思わぬ形でカムヤライドの正体の一端が明かされることになりますが(ちなみにこの事実自体は雑誌掲載時にも描かれていましたが、その前後の事情は単行本描き下ろしで追加)、しかしそれはここでの本題ではありません。

 問題はもう一つの計画――イワレビコの子孫に「肉」を食べさせるという計画で生き残り、人外の力を得たただ二人の成功例こそが、オオウスとオウスだったのです。
 そしてそれに留まらず、さらに語られる真実――オウスが慕ってきた兄・オオウスはその実験の結果暴走、そしてその果てにオウスによって……

 ここで明かされる地獄のような真実は、これまでの描写(たとえば第5巻冒頭など)を見れば確かに――だったわけですが、当然オウスがそれを受け容れられるはずもありません。
 しかしそれを証明する悪魔のような証拠の前に彼の記憶の封印は解かれ、そこから生まれたものこそが――この巻の表紙を飾る第三のヒーロー「神薙剣」!

 しかし悪魔の実験から生まれ、既にオウスの意思すら呑み込んだように見えるこの存在を、ヒーローと呼んでよいものでしょうか。
 現に、ヤマトヒメが目論む神薙剣強化計画への協力を命じられたオトタチバナ(色々あった末に、怪獣退治の専門家として地方巡業中)は、オウスの変貌と、人を兵器として用いんとするこの計画に、あからさまに反発を見せるのですが……

 しかし戦を防ぐためと言われれば、黒盾隊を率いる彼女に拒否はできません。かくてヤマトヒメとオウスいや神薙剣、そしてオトタチバナたちは、モンコを追って菟田に向かうことに。
 そしてその動きをある手段(妙に怪しげなところがあると思いきや、こんな事だったとは!)で察知した天津神側も、自分たちが求めるものが菟田にあると知り、動き出したではありませんか。


 一気に事態は動き出し、最終決戦ムードすら漂い始めた状況。そんな中、主人公たるモンコは――ノツチの悪巧みに巻き込まれ、球技「殖す葬る(ブエスボウル)」に参加することに!?
 この非常時に一体――と思いきや、バンデラスじゃなかったマリアチ率いる敵チームの助っ人には思いもよらぬ二人が参加、ある意味こちらも決戦ムード。いやいやしかし……

 シリアスにもほどがある展開の直後の、落差のありすぎる状況に唖然としつつ、次巻に続くことになります。
(いや、次巻の冒頭ではもっと唖然とすることになるのですが……)


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