« 霜月かいり『アーサーブライト』 転生木村重成と円卓の騎士の聖杯探求 | トップページ | 加部鈴子『本能寺の敵 キリサク手裏剣』 少女忍者の手裏剣が本当に切り裂いたもの »

2022.07.01

『翔べ! 必殺うらごろし』 第3話「突然肌に母の顔が浮かび出た」

 母の志乃を手篭めにして連れ去り、父を殺した修験者・弁覚を追う若侍・真之助と出会った一行。先生が念力を使って描いた志乃の似顔絵で、若と正十は酌婦となった志乃を見つけるが、いまだ弁覚と共に居る志乃は、息子を避けて死のうとする志乃。その場に駆けつけた真之助だが、弁覚が現れ……

 冒頭の正十と若のギャグシーン以外、ひたすら重くやるせない展開が続く今回。若侍・真之助とその母・志乃を中心に物語は展開します。

 幼い頃、病で魘される母に「そなたは私を殺す目をしている」などと言われ、父が祈祷に招いた修験者・弁覚が母を手篭めにした上に攫って逃げ、追いかけた父は返り討ちにされるという悲惨過ぎる境遇の真之助。寝ぼけて(?)おねむを母と思い込んだり、線の細いところもありますが、若を女と見抜き、自分と同様に背負っているものがあると理解したりと、意外と切れる若者であります。
 このくだりの若や、子を失った母として母を失った真之助を見守るおばさん、妖術使い相手の戦い方を伝授する先生、ごく自然体にその身を気遣う正十と、それぞれの形で彼に接するレギュラー陣の姿も印象に残ります。

 一方、志乃の方は、弁覚に弄ばれ、嫌悪しつつも彼から離れられず、酌婦として暮らしているという何ともハードな設定。子を想わない母なんて日本に一人もいないよ! と息巻くおばさんの姿が何とも皮肉に感じられますが、もちろん、決して真之助のことを想っていないわけではないところが、また悲劇を生むのわけで……

 そんな二人の運命を狂わせた弁覚は、外道揃いの本作の悪役らしくやっぱりド外道。本当に本作の悪役はカジュアルに非道を働くのに驚かされるのですが、弁覚と二人の弟子も、特に予備動作もなく(?)いきなり賭場荒らし――というより賭場皆殺しをやらかすのが恐ろしい。いや、江戸か地方かはわかりませんが、そもそも歴とした武家の奥方を辱めて連れ去った上に当主を殺すというだけでも、メチャクチャな悪事なわけですが……

 さて、お楽しみの(?)今回の超常現象は、タイトル通りの人(ここではおねむ)の肌に志乃の顔が浮かび出るというもの。と言っても突然ではなく、先生が真之助に志乃の顔を念じさせた上でおねむの肌を見せ、そこに志乃の顔を投影したというものであります。ただし、冒頭で行き倒れかけた真之助の胸に、ひとりでに母の顔がぼんやりと浮かび上がるという描写があるので、先生の念力はあくまでも助力だったのかもしれません。
 ちなみに解説ではこの現象をデルモグラフィー、つまり皮膚紋画症と言っているのですが、実際の皮膚紋画症は、皮膚を擦ると貧血になったり、充血や浮腫ができる症状のことであって、全くオカルティックなものではありません。とはいえ、いわゆる聖痕とか、人肌ではないものの卵の殻に念力で絵を描いたという話はあるので、その辺りがベースとなっているのかもしれませんが……

 何はともあれ、この肌絵のおかげで何とか再会した母子ですが、そこに弁覚が現れて更なる悲劇が始まります。仕込み刀で襲いかかる弁覚に対し、先生との特訓が実ったか、優勢になった真之助ですが――止めをさそうとした時、間が悪く志乃が声をかけたためにできた隙を突かれて真之助は深手を負い、最後の力で放った刀も、その前に出てしまった志乃に刺さり――と予言が成就してしまうのです。(この辺り、意地悪く見れば、志乃が弁覚を守ろうとしたように見えなくもないのが、巧いというか何と言うか……)

 それでも真之助の無念の声を先生が聞き逃すはずはなく、今回のターゲットは弁覚と二人の弟子。おばさんは最初の一人はおばさんは焼き芋で引きつけた上、「いろはの「い」の字は何てえの?」と問いかけ「犬も歩けば棒に当たる、だ」と答えたのに、「違うよぉ、お坊さん。いろはの「い」の字は」――とここで上着を脱ぐとその下から目にも止まらぬ速さで匕首を引き抜き、突き刺して――「命いただきます、の「い」ですよぅ」と嬉しそうに言い放ちます。

 そして彼を探しに来た弁覚ともう一人の弟子には、若と先生がそれぞれ別方向から猛然とダッシュで接近! この二人が交錯するように突っ込んでくるというだけで悪夢のような展開ですが、弟子の方は若が巴投げを食らわしたりぶん殴ったりしてうつ伏せにダウンしたところに、ダイビングフットスタンプで背骨をへし折られます。
 そして先生と弁覚の対決は――一瞬の交差の後に、先生は素手で弁覚の仕込み刀を握り止め、自分は旗竿を叩き込んでフィニッシュ。いつもながら先生の圧勝のようですが、刀を受け止めた先生の手から血が流れたのを見ると、やはり弁覚もかなりの使い手だったということでしょうか……


『翔べ! 必殺うらごろし』上巻(キングレコード DVD) Amazon


関連記事
『翔べ! 必殺うらごろし』 第1話「仏像の眼から血の涙が出た」
『翔べ! 必殺うらごろし』 第2話「突如奥方と芸者の人格が入れ替った」

このエントリーをはてなブックマークに追加
 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 

|

« 霜月かいり『アーサーブライト』 転生木村重成と円卓の騎士の聖杯探求 | トップページ | 加部鈴子『本能寺の敵 キリサク手裏剣』 少女忍者の手裏剣が本当に切り裂いたもの »