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2022.08.16

「コミック乱ツインズ」2022年9月号(その三)

 「コミック乱ツインズ」2022年9月号の紹介のラスト、第三回であります。

『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
 妻の父である中山信正を討ち、もう一人のターゲットにして祖父の仇、そして宇喜多家没落を招いた島村盛実をついに追い詰めた直家。そんな状況での盛実の往生際の悪すぎる一発ネタには噴きますが、ここからは基本的にシリアスな――といってもきっちり四コマのオチを交えつつ――戦国時代の「家」にまつわるドラマが描かれることになります。
(そんな中で、祖父に対する直家の姿に、意外な温かみが感じられるのもイイ)

 しかし、それでは二つの「家」に挟まれた者はどうなってしまうのか? その答えが、今回描かれることになります。それも最も悲しい形で……。その結末を予想しつつもこの道を選ばざるを得なかった直家の心中を、重臣たちだけは理解していたというのは、せめてもの救いでしょうか。


『カムヤライド』(久正人)
 「殖す葬る」の真っ只中に乱入してきた国津神をあっさりと葬り、今度はモンコに迫る神薙剣ことヤマトタケル。しかし今度はその神薙剣の中に眠るニ=ギの肉体を求めて、四人の天津神が出現――と、緊迫感溢れる前回の引きでしたが、今月は冒頭から四人同時変身(四ページ連続名乗り)が繰り広げられ、前回既に変身していたコヤネと合わせて見開きで五人の見得切りという、ニチアサ感溢れるシーンからスタートすることになります。

 突然カラフルな(たぶん)奴らが登場してポーズを決め、一同唖然となっている中、おそらくただ一人、この事態のとんでもない危険性を理解しているモンコ。何しろ一体ですらヤマトを壊滅させかかった怪人(あやしざね)が五体も現れたのですから尤もですが――しかもそのうちのコヤネは、モンコのイケメン発言に触発されてついに本気を出そうとしているではありませんか。
 もっとも彼らの狙いは神薙剣ですが、しかし恐るべき能力を持つ彼らがその力を発揮すれば、周囲もただではすみません。そしてモンコが身を盾にしてマリアチたちを逃がす一方で、天津神たちと戦いを始める神薙剣ですが――一対一であれば勝るとも劣らぬ力を発揮すると思える彼も、さすがに連携攻撃を仕掛けてくる五体相手では分が悪すぎるとしかいいようがありません。

 そんな彼を唯一助けることができるはずのモンコも、仲間たちの盾となるので精一杯。いや、その盾すらもはや限界となった状態に――と、しかし! という燃える場面で次回に続きます。


『列士満』(松本次郎)
 天狗党の乱に続き、幕府歩兵隊が次に向かった戦場、それは――第二次長州征伐という、ほとんど出オチのような今回。
 大島口の戦いの上陸作戦に参加した彼らはあっさりと村を占領するのですが――友好的に出迎えた村民に対する歩兵隊の態度が理不尽すぎて、ほとんどギャグ漫画になっているのが凄まじい。そりゃ確かに長州兵も怒るのも尤もな話で、暴れ放題暴れたところに長州軍とお百姓さんの逆襲を受け、歩兵隊はあっさり撤兵するハメになるのでした。

 そして次に歩兵隊が加わったのは、芸州口の戦い。散兵戦では、構成員といい装備といい、ある意味似た者同士の奇兵隊を相手に散兵戦を仕掛けてついに勝利、次いで芸州口の戦いでも陣地防衛に参加したのですが――しかし彼らがいかに奮戦したとて、「正規軍」というべき諸藩のサムライたちは既に近代戦にはついていけず、戦い自体は敗北に終わることになります(そんなサムライと、歩兵隊の姿を対比してみせるラスト直前の見開きが、静かに印象に残ります)。

 そしてそんな中、散兵戦を指揮して見事成功させるなど頭角を表すスエキチですが、しかし歩兵隊に加わる前、初めて殺した相手の顔が忘れられず苦しむ状況。はたして歩兵隊の行く末は、スエキチの未来は――短期集中連載だった本作、次回終章であります。


 次号は特別読切で盛田賢司の博徒もの『真剣にシす』が掲載されるとのこと。これまで小学館の雑誌で剣道もの、時代ものを中心に活躍してきた作者ですが、リイド社は初登場でしょうか。適材適所という印象だけに、楽しみです。


「コミック乱ツインズ」2022年9月号(リイド社) Amazon

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