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2022.08.14

「コミック乱ツインズ」2022年9月号(その一)

 「コミック乱ツインズ」9月号は、表紙が『軍鶏侍』、巻頭カラーが『そぞろ源内 大戸さぐり控え帳』。レギュラー陣もほぼすべて掲載されています。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介していきましょう。

『そぞろ源内 大江戸さぐり控え帳』(叶精作&天沢彰)
 全三話で描かれてきた「血を吸う女」編も今回でラスト。江戸で次々と発見される、血を抜かれた死体の謎に挑む平賀源内と仲間たちですが、その一人、同心・浅間和之助の妹の幸が下手人と思しきおたみと犬丸の手に落ち――という展開から、おたみのもとに源内と和之助たちが踏み込み、物語は結末を迎えることになります。

 が、前回、おたみの体に潜むある秘密に源内が気づいたような描写があったものの、今回語られる真実は正直なところ謎の解明には程遠く(特に吸血の理由が○○だったというのは大きな肩透かし)、吸血の謎を「科学的に」解き明かしてくれるのでは、という期待は大きすぎたようです。
 もちろん江戸時代の話であり、現代人の納得行くような真実を描くのは難しいのかもしれませんが、しかし源内なら――と期待してしまったのも事実。犬丸のおたみへの想いやそのおたみの結末の描写などは悪くないだけにこの謎解きの部分は残念で、正直なところ三回かける話であったかなあと感じます。


『軍鶏侍』(山本康人&野口卓)
 軍鶏侍こと岩倉源太夫の弟子である大村圭二郎が、父に公金着服の濡れ衣を着せて斬殺した元大目付・林甚五兵衛に仇討ちを挑むエピソードのラストであります。旧友に依頼してかつての藩の裁定を覆し、圭二郎の仇討ちの許可を求める一方で、彼の前で長柄刀版の秘剣「蹴殺し」を使ってみせ――と、裏方(?)で頑張ってきた源太夫ですが、いよいよ今回晴れて藩の裁許が下り、圭二郎が甚五兵衛に対して挑むことになります。

 しかし甚五兵衛は還暦を迎えながらも若い頃の剣力を維持したままの藩でも有数の剣士――いや何よりも、ただ煙管を吹かしているだけで近寄った猫が激しく怯えるほどの、凄まじい凶気を放った山本悪役らしいドス黒い迫力を持った人物であります。その凶漢に、はたして若軍鶏の剣が及ぶか……
 というのがこの対決の眼目かと思いきや、決闘シーンでは、ちょっと予想を超えた展開が描かれることとなります。

 決闘の最中、圭二郎が自己流の蹴殺しを見せた時、甚五兵衛の顔に浮かんだ表情は――悪鬼として生きてきた男が迎えた、美しさすら感じさせる結末に心打たれました。猫、かわいいよ猫……


『ビジャの女王』(森秀樹)
 ヤヴェの奸計により、王家に恨みを抱く遊女屋に誘拐されたものの、第二のインド墨者・モズ(と豹とバッタのコンビ)によって無事救出されたオッド姫。今回冒頭で大臣たち(と豹とバッタのコンビ)の前で兄を糾弾するオッドですが、ヤヴェはしらばっくれた上に、オッドには継承権がないと激高する始末であります。
 この事態に、オッドは父王から王の指輪を託されていたと語るのですが――実はそれは指輪の在り処を聞いていたのみ。しかしその場所こそは、代々の王だけが知るビジャロマの谷だったのです。

 世界で唯一、この谷にのみ自生するというビジャロマの木――ビジャの王家の財力の源であり、王家の絶対の秘密である谷の存在を、オッドだけが聞かされていたのです。そしてその谷に、オッドはブブとただ二人向かうことに――って、ジイは「いい思い出ができますよう祈っておりますぞ!」と呑気なことを言っていますが、後を任されるモズたちこそいい面の皮であります。
 それはさておき、谷への旅の途中にオッドがブブに語るのは、かつて交易商であった初代ザグロス王がビジャを乗っ取るまでの物語。前回、乗っ取られた側の末裔である遊女屋の女主人が語ったように、その所業はある意味蒙古軍と変らないかもしれませんが、初代王にもそれ相応の理由が……

 一方、蒙古側には、あいかわらずひっぱりまくるクトゥルンだけでなく、ラジンの傍らに控えるいつものヒゲの男にも大きな謎があるらしく、そろそろこちらのドラマも気になるところです。


 長くなりますので次回に続きます(全三回予定)


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