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2022.09.09

十束椿『兎角ノ兄弟』第2巻・第3巻 兄弟の戦い、いよいよ核心へ?

 幼い頃の奇怪な出会いによって、少年のまま不老不死となってしまった兄と、彼を追い抜いて大きくなった弟の旅芸人コンビが、江戸で起きる様々な怪異の真相を追うユニークな時代アクションの第2巻・第3巻であります。

 幼い頃、四条河原の見世物小屋で奇術師・空蝉一座と出会った志月と千兼の兄弟。不死身の肉体を持つかのような空蝉から、その力を分け与えられてしまった志月は、それ以来年を取らず、如何なる傷も瞬く間に再生する身体となってしまうのでした。
 姿を消した空蝉一座を追い、自分たちも旅芸人となり、曲芸奇術師・兎角奇団として日本中を巡る兄弟は、江戸で怪異の仕業としか思えない様々な事件に出会うことに……

 という設定で展開する本作ですが、この第2巻・第3巻でも、怪奇な事件は続きます。見た者の命を奪うという呪いの絵、何かに憑かれたように言動が変化した少女、胸から菊の花を生やした連続殺人、鬼火とともに現れ犠牲者の身体の一部を奪う通り魔――二人はそんな事件の真相を追い、裏に潜む悪を討つことになります。

 基本的には本作においては、本物の怪奇は志月(と空蝉)の肉体のみというスタンスであり、必然的に怪奇の背後の謎を兄弟が暴いていく――という形になるわけですが、今回収録されたほとんどのエピソードでは、そこにきっちりアクションの見せ場も盛り込まれているのが嬉しいところです。
(個人的には、事件の内容的には一番地味だった、変貌した少女の事件でのアクションの織り込み方に感心しました)


 ただ――非常に厳しいことを言ってしまえば、ミステリ的に見た場合には、本作はかなり粗が目立つ、というのが正直なところではあります。

 たとえば菊花の連続殺人は、いかに医学や捜査法が未発達な江戸時代でもすぐに真相はわかりそうなものですし――また、事件の背後に見え隠れする女が、遊郭から逃げてきたような態であるにも関わらず、匿っている側が全く衣装等を変えようともせず、出歩くのを許しているのはどうにも不自然で……
(そうでなければならない必然性はないでもないのですが、見せ方はあったのでは)

 と、普段であればこのような指摘はしないのですが、謎解きの興味も魅力の一つの作品だけに、その集中力を削ぐような描写の粗さは非常に勿体ないと感じます。


 しかし物語は、第3巻からいよいよ核心に迫る展開となります。志月を不老不死の肉体に変えた空蝉――ついに彼がその姿を現したかと思えば、その姿は想像もしなかった形に変貌し、その謎が、物語を引っ張っていくことになるのです。
 そして登場する空蝉一座も、いずれも一癖も二癖もありそうな異能の面々――というわけで、伝奇度が一気にアップ。それだけに兄弟はこれまでとは比べものにならない苦闘を強いられることになります。

 この強敵たちとの戦いの行方は、空蝉の変貌の理由は、そして志月の肉体は元に戻るのか――全ては来月刊行される第四巻、最終巻にて明かされることでしょう。それを楽しみにしたいと思います。


『兎角ノ兄弟』(十束椿 スクウェア・エニックスGファンタジーコミックス) 第2巻 / 第3巻 Amazon


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