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2022.09.08

響ワタル『琉球のユウナ』第8巻 真の王の誕生 そしてユウナたちの選んだ道

 十五世紀の琉球王国を舞台に、赤髪の少女・ユウナと第二尚氏の伝説の王・尚真王(真加戸)が繰り広げる愛と戦いを描いてきた本作も、いよいよこの第八巻にて完結であります。真加戸の父によるクーデターの真実は、第一尚氏の生き残り・ティダに付き従う白澤の真意は――いよいよ大団円です。

 真加戸と、第一尚氏復興を狙うティダの間で繰り広げられてきた戦いの中、自分の母が第一尚氏の血を引く祝女だったと知り、自ら身を引いてティダと行動を共にするユウナ。
 一方、真加戸は首里城に現れたマジムンと対決する中で、自らの封印された過去――今はティダの側近的存在である白澤が、第一尚氏最後の王でありティダの父・尚徳王を害する姿を目撃したことを思い出すのでした。

 そして真加戸の妹・音智殿茂金の心の翳りにつけこんで操り、これまで真加戸が集めてきた「太陽の依り代の勾玉」のうち、五つまでも手中に収めた白澤。残る勾玉の内一つがある久高島に渡ったティダ一派ですが、そこでユウナが出会ったティダの弟・黄金子は不審な動きを見せて……


 という展開を受けて始まるこの最終巻は、大団円に向けて、怒涛のごとく突き進んでいくことになります。
 人間の歴史を密かに見守ってきた神マヤー(かわいい)がユウナに見せた白澤の真の狙いとは何か。七つの勾玉のうち、最後の一つはどこにあるのか。心を過去の悔恨に囚われた音智殿茂金は救われるのか。真加戸とティダの対決の行方は、そしてユウナと真加戸の愛は……

 と、これまで物語を構成してきた様々な要素が、一気に結末に向かい動き出す様はひたすら壮観。登場人物も、ユウナと真加戸、ティダ、白澤だけでなく、これまでユウナたちと関わってきたキャラクターの多くが久高島に集うのですから、物語が盛り上がらないはずがありません。
 正直なところ、ちょっぴり早足の印象もありますが、しかし物には勢いも必要です。意外な真実の発露とともに動き出すクライマックスには、このくらいのペースが相応しいように思います。

 しかしこの意外な真実、つまり白澤の真意と、真加戸の父である金丸のクーデターの理由ですが――それ自体は伝奇的に非常に面白いものの(何故第一尚氏が皆殺しされなければならなかったかなど)、穿った見方をすれば、架空の人物(?)である白澤に責任をおっかぶせて、血にまみれた歴史を漂白したように見えるかもしれません。

 確かにそれは完全には否定はできないのですが、しかし真加戸がこの巻で真の王と呼ぶべき存在になったのは、白澤の所業によって父のクーデターにある意味正当性が与えられたからではありません。
 真加戸にとっては、父の所業は疑問でこそあれ既に変えられない過去であり――彼にとってそれ以上の「罪」であった偽りの信託で王位に就いたことと合わせ、全てに正面から向き合い背負う覚悟を決めたからこそ、彼は真の王となったのですから。


 そして真加戸が、ティダが、もちろんユウナが、新たな人生の一ページを迎えたところで、本作は終わりを告げます。それはある意味、物語が終わり、歴史が始まったといえるでしょう。それは、ユウナたちが運命に流された結果ではなく、自分自身の意思で歩むべき道を選んだということによる結果であり――本作にまことに相応しい結末、まさしく大団円です。

 そしてもう一つ、巻末に収録された単行本のおまけ漫画の舞台となる時と場所が――これはやられた! というほかありません。脱帽であります。


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