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2022.09.17

「コミック乱ツインズ」2022年10月号(その二)

 「コミック乱ツインズ」10月号の紹介の続きであります。

『ビジャの女王』(森秀樹)
 オッド姫とブブはほぼお休みで、モンゴル側のドラマが描かれる今回。いよいよ本格的に登場したラジンの従妹・クトゥルンの動向は――と思いきや、冒頭から(というより今回のサブタイトルですが)「オルゴイホルホイ」というワードが目に飛び込みます。見間違いかと思いましたが、間違いなくこれは、UMAファンみんな大好きなモンゴリアンデスワーム! 確かにモンゴルですが、『戦国自衛隊』にヴェロキラプトルを出した作者だけにまさか!? と思ってしまいますが――さすがににそれはなくてちょっと残念(?)

 それはさておき、自分の肉体と地位(将来性)をエサに、四人の男たちを手元に置き、コマとして操るクトゥルン。まだ未熟ながらもカリスマで周囲を惹きつけ、その力を束ねるオッド姫とは正反対のキャラクターですが、それだけに何をしでかすかわからないところがあります。そしてそんな彼女の作戦によって、物語は大きな動きの予兆を見せるのですが――何はともあれ、ラジンは本当に総身に知恵が回りかねていたのだなあと、ある意味感心いたします(そして前回ほのめかされて今回明かされた名無しの正体も面白い)


『列士満』(松本次郎)
 最終回の今回は箱館戦争――というわけで、脱走したり集結したりしながら、ついに北の果てまで流れ着いたらしいスエキチ。相方である百姓のダイスケと、最後まで何故かずっと眼鏡が割れてた上官殿も健在で、「列士満」として戦線に加わるのですが――入れ札でリーダーを決めるという共和国の制度に無邪気に感心するダイスケの夢を、一発の砲弾が打ち砕くことになります。

 箱館戦争ということで戦いの結末は明らかではありますが、それでも生き延びた「列士満」――武士未満の者たちを待つ運命は、悲しく辛い、というよりひたすら虚しいもの。「一将功成りて万骨枯る」というよりも、一つの時代の陰で隠され、捨て去られた者たちの物語に相応しい結末というべきでしょうか。とはいえ、そうしたドラマだったからこそ、もっと時間をかけて彼らの姿を描いて欲しかったという印象は強くあり、その点は非常に勿体なかったと感じます。


『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
 相良たちによる城代派の隠れ屋敷(二胴剣士養成所)襲撃に助太刀し、見事二胴剣士を相手に、正面から勝利してみせた佐内。しかし戦いはまだ終わらず、この襲撃の大きな目的である城代の腹心・坂東孫十郎が裏口から逃亡しようとしていたのですが――しかし裏口にはあの渋くて頼りになるイケオジ体術使いの立木野伝蔵さんが備えていた! 護衛の剣士を軽々と片付け、残る剣術の腕は目録程度という坂東孫十郎など軽い軽いと思いきや――思惑通りにはなかなか運ばないというのは、実戦の仕方のないところでしょうか?

 何はともあれ、二胴打倒の切り口を与えてくれた立木野さんと久々に顔を合わせ、礼をいう佐内ですが、自分の知らない会話のことを知りたがる相良と突き放す佐内の姿がなかなか愉快です(これを見ていた相良夢男子たちの妄想も捗るのでは……)。
 そして道場に戻り、今日の立合いを思い返しながら、宿敵・川越を相手にイメトレする佐内。これまでは自分が無残に屍を晒すばかりだった佐内ですが、今度は見事に自分の勝利をイメージ、ドヤ顔で剣技に名前までつけちゃう佐内がかわいい――というのはさておき、このシーンの作画は迫力だけでなく美しさも感じさせるもので、ある意味今回のクライマックスと言えるかもしれません。


『真剣にシす』(盛田賢司)
 本誌初登場の作者による特別読切は、博奕が大流行した天保時代に、博奕狂いの医師・夜市と、相棒(?)の初老の剣士・左門次のコンビを主人公としたギャンブルもの。盛り場で女性に絡む三下を叩き潰した二人は、その三下の親分であり、天下一の博徒と称する袁蔵の賭場に乗り込んで、「ちょぼいち」勝負を挑むことに……
 という内容の本作、ベテランだけあって、画も展開も破綻なく描かれるのはさすがと感じます。とはいえ正直なところ博奕の仕掛け自体はあまり珍しいものではなく、それだけに夜市も本領を全て発揮したという印象ではないのが、少々勿体ないところです。

 ちなみに本作のオチですが――作者の作品で、どこかの藩から妙な誘いがあったらそれは逃げるよなあ、とちょっとおかしくなりました


 次号は『不便ですてきな江戸の町』(はしもとみつお)、『かきすて!』(艶々)、『風雲ピヨもっこす』(森本サンゴ)、『玉転師』(有賀照人)が掲載されるとのことです。


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