« 張六郎『千年狐 干宝「捜神記」より』第8巻 深い闇を覗き込む「原典」回帰編 | トップページ | 『辺獄のシュヴェスタ』第6巻 »

2022.11.28

真じろう『剣仙鏢局 ケンセンヒョウキョク』第2巻 亡国の王子が知る鏢局の存在意義

 亡国の皇子・セツカと、彼を「運ぶ」ことを依頼された花乱鏢局の戦いを描くファンタジー武侠の第2巻であります。苦闘の末、無事落ち延びることができたセツカ。敵の手中にある許嫁のシラハを救い出すため、鏢局に加わることを望むセツカに対し、鏢局のコクヨウが課した試練とは……

 大国・ジャンの第三皇子として生まれながらも、友人であった小国・レンの皇子・スイレンによって国を滅ぼされ、王家でただ一人生き残ることとなったセツカ。
 スイレンには見逃されたものの、傭兵たちに命を狙われ絶体絶命となったセツカを助けたのはコクヨウ率いる花乱鏢局――凄腕揃いの彼らにより、セツカは「荷物」として護衛されることになります。

 レンの猛将・コウゼン将軍に囚われた鏢局のシュンを助けるため、セツカは覚えたての飛剣と奇策で立ち向かい、辛うじて勝利を収めるのですが……


 そんな冒険の末に、目的地であるショウ国の交易都市・平安にたどり着き、ひとまずの危機は去ったセツカ。しかしセツカはスイレンの下でひとまずは庇護されている婚約者・シラハを救い出すため、自分も鏢師となることを望みます。
 そんなセツカに対して、コクヨウが課したのは、平安から半日ほどの村へ銀子五千両を輸送するという任務。シュン、そして鏢局の女剣士・ホウランとともに村に向かうセツカですが、その荷を狙って盗賊が襲来、しかもその正体は、かつてのジャン国の兵士たちで……

 という、なかなか底意地の悪い物語が展開するこの第二巻。しかし一つの国が滅んだ時に影響を受けるのはその王家だけでないのは当然の話で、旧主に忠義を果たしたために新たな国からは敵扱いされるというのは、これは現実世界の日本でも百五十年ほど前に実際にあった話であります。
 そんな一つの歴史に巻き込まれた者たちに対して、滅ぼされた王に何ができるのか――というのは難しい問いかけではあります。しかし本作はそこに鏢局の任務を絡めて、新たな評価軸を作り出すことで一つの答えを出しているのが――ある意味ずるいといえないこともないのですが――面白いと感じます。

 何よりもここで新キャラのホウランの過去も交えて示される鏢局の存在意義は、セツカだけでなく我々読者にも、鏢局というのもの何たるかを叩き込むものというべきでしょう。
 ホウラン自身はそこまでインパクトのあるキャラではないのですが、しかしクライマックスで見せた「手段」は、それを補ってあまりある、鏢局に務める者としての覚悟を見せるものと感じるのです。


 さて、物語の方はここまでが序章というべきか、この巻のラストで時は一気に三年流れ、フセツと偽名を名乗るセツカも、鏢局の一員として頼もしく成長した姿が描かれることになります。
 その一方で、彼の運命を変えたスイレンは覇王として大陸に君臨――はしておらず、まだまだ統一には程遠い状態。むしろ覇道と王道の間で、自分の理想を如何に実現すべきか
悩んでいるというのが、ちょっと意外性があって面白いところです。
(物語冒頭のあれは単にイキっていただけなのか、という気がしないでもないですが……)

 しかしそんな彼のこの先に影響を与えそうなのが、彼とは協力関係にある、武林から追放された七人の達人――爪甲山の北斗七星。そのリーダーである貪狼星の蛇牙鉄屍は、かつてコクヨウを破ったという因縁もあるのですが、どう見ても善人という柄ではなく、この先スイレンを昏い道に引きずり込んでいくのではないか――そんな印象があります。

 何はともあれ、全く道を違えることとなった二人の少年の道は、まだ思わぬところで絡み合っている様子。はたしてこの先に待つものは――武侠アクションだけでなく、大河ドラマとしても期待してよいのかもしれません。


『剣仙鏢局 ケンセンヒョウキョク』第2巻(真じろう&深見真 スクウェア・エニックスビッグガンガンコミックス) Amazon

関連記事
真じろう『剣仙鏢局 ケンセンヒョウキョク』第1巻 大陸を駆けるプロフェッショナル見参

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

|

« 張六郎『千年狐 干宝「捜神記」より』第8巻 深い闇を覗き込む「原典」回帰編 | トップページ | 『辺獄のシュヴェスタ』第6巻 »