『REVENGER』 第二話「Gold Opens Any Door」
養父を斬り、許嫁をも喪い、生きる気力を失った雷蔵。そんな彼に碓水は自分たちが晴らせぬ恨みを晴らす者――利便事屋であると語り、仲間になるよう促す。折しも、自分を騙して苦界に沈めた男への復讐を願って死んだ女郎から、依頼があったことを知った雷蔵は、利便事屋に加わることを決意する……
前回と合わせて、設定紹介と主人公の利便事屋参入という、作品の基本的な部分が描かれる今回。冒頭で描かれるのは、利便事屋の元締めに当たる見るからに怪しけな神父・ジェラルド嘉納と碓水の会話であります。前回、薩摩の勘定奉行・松峰を始末したいわゆる仕事料を受け取る碓水ですが、嘉納の方はそこに雷蔵が加わっていたことを知っていると露骨に匂わせ、碓水はすっとぼけることになります。
要するに、自分たちの仲間でもないものが仕事に加わっていたというのは大きなご法度破り、それならば仲間だったということにすればよい(=仲間にしてしまえばよい)というのは、なるほど、主人公が裏稼業に加わる時の、チーム側の理屈としてはよく出来ています。
この辺り、嘉納と碓水の腹に一物も二物もありそうな面子同士のやり取りを通じて、利便事屋の基本設定(の一つ)を見せつつ、雷蔵のチーム参入のロジックを提示しつつ、嘉納の胡散臭さを見せるというのは、なかなかよく出来ていると感じます。
そして物語の本筋の方は、自分を裏切って女郎屋に売った男への復讐という、ある意味前回以上に定番の内容ではあるのですが――死んだ後に葬式も出せなくても(つまり来世での安寧を捨てても)依頼料を作ろうとする依頼者側の鬼気迫る姿を、生前のかなり強い台詞も含めて描くことによってなかなかのインパクトを感じさせます。雷蔵が仲間入りする理由として、それなりに納得できる描写というべきでしょうか。
また、前回触れませんでしたが、雷蔵や標的を含めた関係者を薩摩人にしたことで舞台が長崎から薩摩に移り、物語に不自然さが感じられた――薩摩であれば抜け荷は他所でできるのでは(まあ、どうも本作は阿片を売っている国が出島に来ているようですが)とか、ずいぶん簡単に薩摩に出入りできるなとか――のに比べると、シンプルな分、破綻はかなり小さいと感じられます。
そして今回雷蔵の仲間入りとともにエピソードの中心になった感があるのは、前回出番がほとんどなかった徹破の描写でしょう。病で死期の近い遊女を親身になって世話をするという慈悲深い医者の顔を見せつつも、利便事屋としては武器や装備を準備する担当であり、それだけでなく実はメチャクチャ肉体派でもあるという、幾つもの顔を持つ彼の存在は、ある意味今回最も印象に残ります。
いわゆるテクノロジー要員、ギミック要員かと思いきや、実はパワー要員――いざ仕事ではコンポジットボウ(!)を持ち出し、シャツのボタンをぶっちぎってその肉体美を見せつけながら超々遠距離からの狙撃(というかほとんど砲撃)を決めるシーンは、鉄兜と鎧という世紀末な感じで登場した、標的の悪徳商人の若旦那の護衛が一発で川の藻屑となる描写も相まって、強烈なデビュー戦と言えるでしょう。
一方、覚悟を決めて(もろ肌脱いで刀を取り出すので、お、切腹? と思わせて髭を剃る描写が楽しい。しかし脇差でやればいいのにと思ったら、この人は一本差しだった……)仲間入りした雷蔵の方も、徹破からもらったいわゆるスパイク付きのブーツを使って、大ハッスル――ただでさえ強烈な示現流の突進力をスパイクで強化して、大ジャンプからの大斬り一閃で標的を叩き斬ります。「虎に翼を付けてしまった」は、けだし的を射た表現でしょう。
そしてもう一人の標的である、若旦那の父親の方は、陰間好きにつけこんで鳰が誘い出したところを碓水が金箔フィニッシュ。碓水の決めポーズである背中の刺青アピールは、宗門絡みの相手でもないのにどうなのかなと前回思いましたが、利便事屋の宗旨を考えれば、神もご照覧あれということなのでしょう。
何はともあれ、シンプルな内容に派手な殺しのシーンという本作のスタイルができたかのように見えるこの第二話。このスタイルでしばらくいくのか、早々に崩していくのか(まさか最後までこれということはないでしょうから)、ここからがむしろ色々な意味で注目すべきかもしれません。
それにしても公式サイトでのジェラルド嘉納の解説、「長い禁教と弾圧の中で、その信仰は独自のものに変質してしまっている」「戦国時代に伝来した一神教の信者」という設定は、史実を踏まえつつ、色々とエクスキューズが効いた設定だと感心します。
(まあ、デウス云々とか言っていましたが)
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記事
『REVENGER』 第一話「Once Upon a Time in Nagasaki」
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