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2023.01.17

「コミック乱ツインズ」2023年2月号(その一)

 今月の「コミック乱ツインズ」誌は、珍しく実写の人物が表紙――と思えば、今号は映画『仕掛人・藤枝梅安』公開目前総力特集号。豊川悦司の梅安と、『仕掛人めし噺 藤枝梅安歳食記』の梅安が表紙を飾ります。また、巻頭カラーは『真剣にシす』です。今回も印象に残った作品を紹介します。

『真剣にシす』(盛田賢司&河端ジュン一・西岡拓哉/グループSNE)
 というわけで連載第二回で巻頭カラーの本作は、謎の「天下博徒御前仕合」の説明からスタート。神君家康が定めたというこの幕府公認の賭博仕合、あらゆる欲望を思うがままにできる参加博徒は「真剣士」と呼ばれる――とここでタイトル回収でしょうか。そしてこの仕合、各藩が自分の欲望のために代表となる真剣士を抱えている――これは絶対倒幕を企てているやつがいるに違いない(しつこい)――というわけで、いかにも幕府の人間っぽい顔をしていた女・凪も、某藩の使いとのこと。
 しかし真剣士になるには一万両が必要、と何だか怪しげな話ですが、博徒として一万両集められる才と力を見せた上で、真剣士を破れば自分が真剣士になれる――というわけで、まずは一万両を集めるために、夜市と左門次は、強運を以て鳴らす漁師・えびすの源蔵と勝負するため博多へ向かうことに……

 かくして夜市と源蔵が勝負を繰り広げるのですが、その題材は花札のこいこい、ルールは一文(一点)二十五両という、如何にも賭博漫画らしい豪快な勝負であります。もっとも、これまでの勝負に比べると、非常にメジャーなゲームだけに内容はかなりシンプル、勝利の決め手も意外性はないのですが、それでもきっちり一話通して読ませていただきました。
 しかしまだまだ一万両には遠いわけですが……


『ビジャの女王』(森秀樹)
 表紙に誰かの髑髏のアップが描かれた今回、何が登場してもおかしくない作品だけに違和感はありませんが、さて物語の方は、今回も蒙古軍の内部抗争が描かれます。ラジンを捕らえたクトゥルンの配下についたと見せかけた名無しの策で、ラジン軍がクトゥルン軍に奇襲をかけて――というわけで、十ページ近くが大乱戦に割かれることになります(同士討ちを避けるために目印をつけているラジン軍ですが、それでも読んでいてどちらがどちらかわからなくなる戦場の怖さよ)。
 そんな中、再会したラジンと名無しは、互いにニヤリと笑みを浮かべると、ガッチリと男臭い腕相撲スタイルの握手。とりあえず名無しの尻も安心のようです。

 そしてついに勝負はつき、捕らえられたクトゥルンは――ここで表紙の意味がわかりますが、正直配下たちも読者もドン引き。図らずも戦っていた双方が後継者争いを演じたわけですが、あまりにも対照的な過程と結末を迎えたことになります。もっとも、まだ火種を抱えている点は双方同じなわけで、いよいよ再開されるであろう戦いの行方は……


『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 権力の魔と化したような柳沢吉保が死んだことにより、逆に一気に状況が動き出した感のある八代将軍争い――という中で、今回から最終章である「流転の果て」がスタート。最終章のおさらいといったところか、レギュラーキャラが登場するたびに、非常に格好良い字体で身分と名前が表示されるのが印象に残ります。
 が、そこでいきなり身分を書いてもらえない永渕啓輔は、徳川吉宗を狙い紀州へ。玉込め役を挑発して誘い出し、早速腕試しですが――さすがに主人公のライバルだけあって、その強さといいセリフ回しの格好良さといい、そこらのキャラでは歯が立ちません。

 そして紀文も柳沢吉里も(それぞれお供の多助と一衛にも紹介が!)それぞれの決意を見せる中、我等が水城聡四郎は――書類仕事に追われていた、というのがいかにも宮仕えの大変さを感じさせますが、もちろんこれは嵐の前の静けさでしょう。相模屋では伝兵衛と袖吉が、そして紀州家上屋敷では紅さんがそれぞれの立場から悩み、戦う中、いよいよ物語の舞台は大奥に向かうようですが……


 長くなりましたので次回に続きます。


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