『REVENGER』 第三話「Fortune is Fickle and Blind」
街中で商人が阿片密売の疑いで奉行所の与力・坂田に捕らえられる姿を見た雷蔵。一方、遊郭に幽烟を呼び出した同じ与力の漁澤は、その商人から恨噛み小判を託されたと告げる。坂田が自作自演で阿片の摘発を行っていたことを知り、坂田の始末に向かう惣二と雷蔵だが……
今回冒頭に描かれるのは、鳰に案内されて長崎の街を見物する雷蔵。台詞は一切抜きながら、二人のやり取り、あるいは心中が想像できる見せ方はなかなかに巧みで、舞台背景となる長崎の風景を見せる趣向としても、そしてここで今回のリベンジのきっかけとなる、仏像の中に阿片を仕込んだ廉で奉行所与力・坂田に商人が捕らえられる場面まで見せてしまうのもよく出来ていたと思います。
しかし江戸時代も後期でたぶん色々と緩くなっていたとはいえ、雷蔵のようなかなり後ろ暗い浪人が居着いて問題にならないのかしら……と思ってみていたら、きっちり問題で――というわけで、今回初登場となる、公式サイトで紹介されている(サブ)レギュラーキャラ最後の一人、漁澤の口からその辺りが触れられることになります。
この漁澤、坂田と同じく奉行所の与力ながら、いつも遊郭で遊女をはべらして遊び呆けていることからついた渾名が「かいまき与力」。かいまき=掻巻といえば江戸時代の寝具と夜着の中間の、元祖着る毛布のようなモノですが、掻巻のように寝る時にはいつも遊女をまとわりつかせているからでしょうか? 何はともあれ、蓬髪にド派手な衣装と、どう見ても奉行所の人間には見えませんが(正装した時が全く想像できない)、声は子安武人という時点で、曲者ということが想像できます。
そんな漁澤が幽烟を前に語るのは、やはり色々な意味でいやらしい内容。雷蔵のことは知っているぞと軽く揺さぶりをかけつつ、坂田が邪魔であることを仄めかし、そして冒頭の商人から受け取ったという恨噛み小判――本作におけるリベンジ依頼の証――を託されたものの、俺が持っていても困るけどお前なら何とかできるでしょ、とばかりに幽烟に実質依頼を中継ぎするというくだりは実に面白い。今回の依頼に繋げるのはもちろんのこと、それも含めて、短時間で本作における漁澤の立ち位置を描くのに感心いたします。
さて、一応裏は利便事屋の方で取るわけですが、冒頭で意味有りげに描かれた山肌の集落――街では生きられないものたちが集まっている場で、あっさりと坂田の悪事の証人を発見。生き証人の口封じもしないという、冷静に考えてみなくとも、びっくりするくらい雑な悪事ですが――まあ、法の下にある表の世界の住人相手には、あれでも大丈夫だったのでしょう。もちろん、利便事屋たち、裏の世界の住人には意味がありませんが……
というわけで今回のリベンジですが、参加するのは雷蔵と惣二の二人。今回、惣二の部屋に雷蔵も暮らすことになり、雷蔵を毛嫌いする惣二は、どちらがターゲットを多く殺せるか勝負を持ちかける(自分が多かったら雷蔵を追い出す)のですが――今回は潜入任務ということで基本的に絵面は地味なので今一つ盛り上がらない。ただでさえ地味な惣二だけでなく、雷蔵も東忍流かアサシン教団ばりのテクニックでステルスキルを稼いだりすることもあって、カタルシスやインパクトは、これまでに比べるとかなり抑えめな印象は否めません(まあ、これまでが派手過ぎるというのはさておき)
そもそもこの惣二、利便事屋の他の面子が見るからに常人でなさそうなのに比べると、殺し技もさることながらキャラ的にも一番薄いというか――何だか終盤真っ先に敵に捕まって拷問されて命を落としそうと、非常に失礼な心配をしていたところであります。そして雷蔵の方も、現時点はある意味既に彼自身のドラマは終わってしまった存在(幽烟と鳰の会話を見れば、そうではないことはもちろん察せられますが)。その二人が組んでもなあ――という印象はあります。
しかし今回改めて考えてみると、肉体的にも精神的にも明らかに異形に近い――そしてそれだけに、逆にかなり類型的に感じられる――鳰が、一度道を踏み外した者はもう二度と戻れないというようなことを言っても、はあそうですかとしかと答えようがないのですが、むしろ惣二のような常人に近いキャラクターの方が、こちらの心にグッサリと刺さることを語ることができるのではないかとも感じます。
もちろんそれはこちらの勝手な想像ではありますが、今回も仲間たちが疑問を呈する形で触れられた、幽烟が雷蔵を仲間に引き入れた理由――その隠された答えがこの先描かれるのであれば、その中で惣二の存在感も強くなることを期待します。
そして今回のアバンで描かれた長崎の中で、色々な意味で強烈な異世界感を感じさせていた出島――明らかにイギリスとアメリカ的な旗が掲げられていたのが気になりますが、さてこの先こちらもどのように物語に絡むのでしょうか。
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