「コミック乱ツインズ」2023年2月号(その二)
今年初の「コミック乱ツインズ」である2月号の紹介の後編であります。この号は映画『仕掛人・藤枝梅安』公開目前総力特集号ということは昨日ご紹介しましたが、センターカラーは武村勇治による「かんそう噺」とキャストメッセージが掲載されています。
「かんそう噺」は分量的には二ページですが、武村勇治によるキャスト陣の絵という、結構なレアなものがある意味見どころ。個人的にあえて映画の情報を入れていなかったので、この役がこのキャストで!? というのを知ることができたのが有り難いところです。映画が楽しみになってきました。
『仕掛人めし噺 藤枝梅安歳食記』(武村勇治&池波正太郎)
そしてスピンオフ漫画の本作は、映画には登場しない小杉さん――というより小杉さんと師匠の牛堀九万之助、そのまた師匠の浅井為斎回。剣の腕が元で不遇の人生を歩むことになった小杉さんですが、三人で食べた「鴨とねぎのくず煮」、そして師に勧められた「菜の花のからし漬け」に励まされ……
と、料理は美味しそうだし短いながら良い話なのですが、本編の終盤を思うと複雑な気分になるのは、これは野暮というものでしょう。
『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
たぶん父の仇にして最強最後の敵である二胴の兇剣士・川越と真剣勝負の時を迎えた佐内。対二胴の秘剣も及ばぬ相手に佐内は――と、今回は冒頭からほとんど最終回のような盛り上がりであります。そして描かれる佐内と川越の決着は、十数ページにわたり、擬音は二人の足が地に着く音と、血が滴りそして噴き出す音、さらにどちらかが倒れる音のみ。後はセリフも音もなく、絵としての描写だけで死闘を描くという、極まりまくった内容に、読んでいるこちらもただ息を呑むばかりであります。佐内の悽愴な表情も印象的で、素晴らしいものを見せていただきました。
しかし佐内が川越を斬ってめでたしめでたしとなるはずもなく、「生きてここからは帰れぬぞ!!」と大道寺家老がいかにも悪人っぽいことを言い出したところで、頼りになる相良が控えおろう! と水野忠邦の花押入りの上意書を持ち出したことで事態は収束するのことになります。
かくて水野家の御家騒動も終息し、佐内は三百両を手に入れ、満枝さんとの新生活も間近――というか相良、この後めちゃくちゃ出世するのでは――と良いことずくめのようで、まだ最終回にならないのがきな臭い。はたして佐内のところに(八百善の弁当を持って)やって来た吉兵衛が語るのは――これで次回は二ヶ月後というのは殺生すぎます。
『カムヤライド』(久正人)
カムヤライド、オトタチバナ・メタル、神薙剣の三大ヒーロー(?)vs五柱の天津神の激闘は続き、フォームチェンジを続ける神薙剣がアマツ・ミラールを追い込む一方で、カムヤライドはバトルフィールドを自在に変えて襲いかかるアマツ・ダンサントに苦戦し――というところで現れたのは大王の密偵・タケゥチ!?
というところで前回から続いた本作ですが、これまで随所でその体術の尋常でないところを見せてきたタケゥチの柔術めいた技は、なんとダンサントの腕(の一本)を極めて投げた!! 作者の『ジャバウォッキー1914』屈指の名シーン、チンタオサウルスに一本背負いを決める嘉納治五郎を思い出させる異次元の格好良さであります。
そして口撃でもやたら巧みなタケゥチがダンサントの戦力を封じて優位に立つ一方で、カムヤライドに襲いかかるのはアマツ・ノリット。ヤマトで死闘を繰り広げた一方で、しかしそれ以降、互いにそれと知らぬ間に因縁を深めてきた二人ですが――モンコの存在がノリットの魂に火を点けた(そこにこれまでの口癖の理由付けに絡めるのが巧い!)のは皮肉としかいいようがありません。これはどう考えても戦いの最中、あるいは終わった時に相手の正体を知ってしまうパターンですが……
そして残る二柱の天津神を相手に一歩も引かないのはもちろんオトタチバナ・メタル。位置や速度といい、ほとんど異次元から攻撃してくるようなアマツ・シュリクメの鞭攻撃をスーパーアーマー状態で凌ぎ、トドメの必殺技を――というところで衝撃的なシーンが描かれて次回に続きます。
はたしてこれは一体どうなるのか――しばらく登場していないあの人の仕業のような気もしますが、さて。
次号は巻頭カラーで最終回の『仕掛人めし噺 藤枝梅安歳食記』を掲載。また、特別読切で鈴木あつむ『口八丁堀』が再登場のようです。
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