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2023.01.28

『REVENGER』 第四話「Ask, and You Shall Receive」

 同じ部屋で暮らすようになったものの、一日端座しているだけの雷蔵に業を煮やし、働き口を周旋する惣二。しかし雷蔵は堅さが抜けずうまくいかない。そんな中、先日の与力・坂田への利便事から、安曇屋とその妾が漏れていたことが判明。妾宅の見張りのため、その前の店番を務める雷蔵だが……

 レギュラーも揃って設定回も一回りしたということか、日常ほんわか回という印象の今回(まあ、人死にはありますが)。Aパートがほぼ惣二と雷蔵の噛み合わないやり取り、というか惣二が一人で空回りしているだけなのですが、まさか主人公が「異常に朴念仁で言動がほとんどギャグのお侍さん」枠になるとは……
 とはいえ、確かに利便事屋はそれ専門では食っていけない――というよりそれだけで食っていたらそれは純粋に殺し屋であるわけで、もう完全に裏街道の住人。そうではなく表の顔、つまり日常との接点を持つことで彼らの中で、あるいは周囲の人々との間に生まれる様々なドラマを描くことが、こうしたスタイルの物語の一つの意義であるとすれば、これは必要な展開であるといってよいのかもしれません。
(まあ、当の惣二が、ほとんど利便事屋頼みで暮らしているんじゃないかという気はしますが……)

 そこで、大して禄を貰っていなかったであろう雷蔵なら何か手に職あるのでは、というのは、意外なようでいかにも時代ものらしくてよい視点ですが、剣術バカを絵に描いたような雷蔵にはそれもなし。もはや雷蔵に売れるものとしたら、鳰の手引で――と惣二の妄想が危険な領域へと突入しそうになりする一方で、前回の利便事が思わぬ形で尾を引くというのも面白い展開であります。

 実は利便事した与力には、彼と組んで甘い汁を吸っていた商人と、悪事を手伝っていた妾がいた――というわけで、結局、前回の漁澤の言は奉行所でのライバルを除くのが目的の限定的なものであった、所詮あんな奴は云々と良い声で立腹するジェラルド嘉納。その嘉納も見るからに信用できず、そして二人の間に挟まってる幽烟もまた胡散臭い――と、地獄のようなトライアングルですが、この辺りはきっと終盤大変なことになるのでしょう。
(しかしジェラルド嘉納の言では、利便事屋は長崎だけでも幽烟たちのチームだけではない、いや長崎以外にも居るということのようですが――日本中で個性豊かな潜伏一神教の皆さんが利便事しているのでしょうか)

 何はともあれ今度こそ片を付けると言っても、大事になるのは地道な下準備。ここで雷蔵は見張り役として、貸本屋の店番になるのですが、しかし今までの様子を見ていれば、大丈夫なのか大いに不安になるところではあります。ここで惣二からの適当にやれという言葉を生真面目に受け止めた雷蔵が、思わぬ成果を出すわけですが――利便事本番の方は、鳰が凧で注意を引いて先生が遠距離射撃で商人を仕留め、妾の方は幽烟の金箔でフィニッシュと、前回出番のなかった面々で決めることになります。幽烟のフィニッシュムーブはあったものの、ちょっと大人しめの利便事だったのは、今回は利便事(だけ)が主題ではないということなのでしょう。

 さて、雷蔵が店番しながら手慰みに描いた絵から明らかになった思わぬ特技とは、異常に写実的な絵の上手さ。正直なところ、全く学ばずにいきなりあれだけ描けるというのは唐突感は否めないのですが、何だかもう今まで振り回されてきた惣二の心境にシンクロしてしまったので、素直に喜ぶことにします。
 が、そこでめでたしめでたしのはずが、妙に険しい顔で雷蔵を見つめていたのは幽烟。途中で何やら不穏なことを口走っていたこともあり、雷蔵に新たな生きる道を持って欲しくないような印象すら受けますが――その辺りは、彼が雷蔵を仲間に引き入れた真の理由に関わってくるのでしょうか。やはり幽烟の真意が、この先の物語の鍵を握っているようですが、さてそこまでどうやって引っ張っていくのか? おそらく1/3まで来たはずの物語も、いよいよ大きく動いていくのでしょうか。


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記事
『REVENGER』 第一話「Once Upon a Time in Nagasaki」
『REVENGER』 第二話「Gold Opens Any Door」
『REVENGER』 第三話「Fortune is Fickle and Blind」

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