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2023.02.16

「コミック乱ツインズ」2023年3月号(その二)

 「コミック乱ツインズ」2023年3月号の紹介の後編であります。


『真剣にシす』(盛田賢司&河端ジュンほか)
 「天下博徒御前試合」に出場する権利を持つ真剣士を目指して、博多にやってきた葛の葉の夜市と左門次。前回はえびすの源蔵にこいこいで快勝した夜市の前に現れたのは、真剣士候補の鶏師峰助――というわけで今回の勝負は闘鶏。なのですがメインとなるのは、夜市の相棒・左門次の無双の暴れっぷりの方であります。

 正々堂々勝負するようなことを言っておきながら、寝込みを襲ってきた峰助の刺客十数名を単身迎え撃つ左文次。それも刀だけでなく、竹竿やら材木やら鎌といった、その辺に転がっていたものまで武器として用い、環境全てを味方につけて迎え撃つ――いやむしろ襲いかかるという恐ろしさであります。
 これまでもその凄まじい剣の腕が仄めかされてきた左文次ですが、しかし今回はその強さが剣に限らない――というより普通の武士のそれとは思えない内容であることが示され、前歴は御庭番か何かか!? と思わされるほど。しかしノッてくると常人では理解できないレベルの凄みを出してくる辺りは、夜市と良いコンビだと思わされます。

 そしてその夜市の勝負の方は――そんな手ありか、というえげつなさすぎる(軍鶏侍激怒必至の)手段で決着。さていよいよ真の真剣士と対面することになりますが……


『口八丁堀』(鈴木あつむ)
 その知識と減らず口で相手を論破していく北町奉行所の例繰方同心、減らず口之介――いや平津内之介の活躍(?)を描く読み切りが、好評に応えてか早くも再登場であります。
 今回内之介が舌鋒鋭く切り結ぶのは、今日から見習い与力となった若者・趙田。年番方与力の子であり、先輩たちにほとんど重箱の隅を楊枝でほじくるような質問を繰り返しては、答えられないと勝ち誇るという、どうにも鼻持ちならない相手に対して、内之介が立ち向かうことになります。

 前回同様、「言の刃仕合」と称して、論戦を剣術試合に模して描くのが実に楽しいのですが、今回の趙田は刀というより鎖鎌を使うような、様々なジャンルについて多方向から不意打ちのように攻めてくる難敵。しかし最大の問題点は、見習いから先輩への質問という形式上、内之介は一方的に攻められるしかない、反撃できないという事実であります。
 あまりに不利なこの勝負、如何に収めるのか――と思いきや、これがこの特殊なシチュエーションを逆手に取った、見事な逆転ぶりに感心させられました。

 勤め人ならではの何とも苦しい立場を描くオチも効いています。


『カムヤライド』(久正人)
 脇から参戦したタケゥチがアマツ・ダンサントを抑え、カムヤライドがアマツ・ノリットを推音速狗(オオトバイ)で迎え撃つ一方で、スーパーアーマー状態でアマツ・シュリクメの鞭を耐えるオトタチバナ・メタルが攻勢に転じ――と思ったところで、脇から飛び出したアマツ・ビズの巨大な尻尾の刃が、オトタチバナを両断……!?
 という衝撃的なヒキとなった前回ですが、あまりに無惨な展開に驚いていれば、それに続くのはさらなる衝撃というか何というか――まあ、これは予想通りの展開にニッコリであります。

 これで数の上では互角になり、いよいよテンション上がる人間サイド。オトタチバナがいかにも彼女らしい無茶なやり方でシュリクメを追い詰める中、カムヤライドは本気になったアマツ・ノリットが放つ超音速弾を推音速狗で完封。そしてそこから一大痛撃を――と、この辺りは本当に画で見てほしい壮絶バトルの連続、特にフィニッシュ(?)の格好良さは必見であります。
 いよいよクライマックスが見えてきた五対五バトルですが、このままモンコたちは押し切ることができるのか……?


 次号は表紙&巻頭カラーに、待ってましたの『暁の犬』、『雑兵物語 明日はどっちへ』や『かきすて』も掲載です。そして気になるのは特別読切『なんとショーザン』。金平守人&富沢義彦という、何が飛び出してくるかわからないコンビの新作に期待です。


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