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2023.03.18

「コミック乱ツインズ」2023年4月号(その一)

 「コミック乱ツインズ」4月号の表紙&巻頭カラーは、単行本第5巻が発売された『暁の犬』。鮮やか艶やかな色彩が目に映えます。また特別読切は『なんとショーザン』です。今回も、印象に残った作品を一つずつ取り上げていきます。

『暁の犬』(高瀬理恵&鳥羽亮)
 というわけで本誌の表紙は殺伐としながらも華麗な佐内が飾りましたが、作品の方の表紙は意外な人物。こちらはぜひ実物を見ていただきたいのですが、色々な意味で対象的な
画であります。

 さて、物語の方は、父の仇を討ち、大金を手に入れ、素敵なお嫁さんまで迎える(予定)と、剣豪ものの主人公としては最良のゴールとなった――かに見えた佐内の心に生じたある恐ろしい疑念が描かれることになります。それは、川越が実は父の仇ではなかったのではないか、という疑い――仮にそうだとすれば、佐内の戦いはもちろんのこと、相良たちの勝利となったはずの水野家の御家騒動の行方もわからなくなります。
 そしてその疑いが真実であったことを示すように、新たな犠牲者が出ることとなります。そしてその下手人は……

 これまでの暗闘の中で次々と仲間たちが散っていき、ついに最後に残る一人となった佐内。益子屋は、水野家の「狗」たちと組んで戦うように促すのですが、「狼」である佐内がそれを認めるはずもありません。既に覚悟は決まっている彼は、先に逝った仲間たちそして父と共に、最後まで自分の斗いを見届けてくれと益子屋に告げます。そしてもう一つ、もし自分が死んだら満枝には自分の事は忘れろと……
 しかし佐内はもう一人、自分にはかけがえのない仲間がいることを忘れています。その一人――思いつめたような表情の相良が佐内に向き合ったところで、物語は次回に続きます。

 と、最終回前話のようなテンションの今回でしたが――これは完結後に改めて述べるつもりですが、本作はこれまで原作の展開を踏まえ、見事にビジュアライズしながらも、原作になかったある色彩(いや相良のことではなく――と言いたいところですが、彼のアレもその一つと感じます)を加えてきました。その本作ならではの要素が、今回は特に強く感じられたように思います。
 そしてその要素が本作をどのような結末に導くのか――楽しみでなりません。


『雑兵物語 明日はどっちへ』(やまさき拓味)
 前回は賤ヶ岳の戦が描かれ、同郷の武士・駄馬大将の縁で、柴田勝家の側で戦うことになった捨丸と春。が、勝家の陣が劣勢になる中で駄馬大将は敵の軍勢に呑まれ、そしてそれを助けに向かった春も――と、どう見ても春は(もちろん駄馬大将も)死んだろ、という構図だったのですが、今回の冒頭では捨丸が駆けつけて二人をあっさり救出。まあそれはよかった……

 というわけで、二人の戦いも、勝家軍と秀吉軍の戦いもまだ続きます。しかし勝家の側は賤ヶ岳で敗れて北庄城に籠もるしかない状況、そんな中で捨丸と春は、茶々・初・江の遊び相手のような役目に就くのですが――しかしついに落城の時が訪れます。そして駄馬大将から「心から信頼できる二人の同胞」(これまでの二人の生き方を思うと、ここまで信頼されるようになったのが何とも感慨深い)として、三人を守って落ち延びることになります。
 が、秀吉に降るのを良しとしない茶々が暴走するのを追いかけた捨丸は、ただ一人彼女を守って壮絶な戦いを繰り広げることに。そして茶々を守りきった捨丸ですが、しかし――と、今度こそマズそうな展開ですが、物語は続きます。

 しかし表紙のこれまでのあらすじページに過去の二人の戦歴が掲載されているのですが、思ったより勝っているな……


『かきすて!』(艶々)
 めでたく単行本第1巻発売となった本作、今回の舞台は桑名であります。公儀隠密見習い的な立ち位置ながら、あまり気にせず今日もマイペースに旅を続けるおハルは、旅の男たちから「はまぐり」が名物だと聞かされ、食べに行こうとするのですが……

 と、もう本作のカラー的にこれだけでオチは予想がつくのですが、本当に「それ」だけで終盤まで押していく勢いというかノリがスゴい。冷静に考えれば悪趣味なオチではありますが、一見それをそれと感じさせないのは、やはり絵柄の力でしょう。


 次回に続きます(全三回予定)。


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