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2023.03.20

「コミック乱ツインズ」2023年4月号(その三)

 「コミック乱ツインズ」4月号の紹介のラストです。今回は、本誌らしい個性的な作品が並びます。

『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
 強敵・三村家親を討つため、鉄砲の利用を考える直家。まあ直家なので利用=暗殺ですが、しかし鉄砲による暗殺、すなわち狙撃というのはこの時代に前代未聞、そう簡単にいくはずもありません。その手段を探す中、直家は家親に討たれた三浦貞勝の妻・お福と何となく接近して……

 というわけで、家親との戦いよりも最近クローズアップされているお福の存在。まあ結果はわかっているわけですが(身も蓋もない)、あまりにも良く出来た女性という感のあるお福が直家とくっつくのに、いかに説得力を持たせられるか、気になるところです。
 というのはともかく、いよいよ始まる日本史上初の狙撃作戦、はたしてその成り行きと結末は……


『真剣にシす』(盛田賢司&河端ジュン一・西岡拓哉/グループSNE)
 ついに小倉小笠原家の真剣士の座を賭けた御前試合にまで漕ぎ着けた夜市。相手は現・真剣士であり小倉藩士の青柳忠兵衛、そして勝負の内容は大蛇酒なる賭博――八岐大蛇の首を模したらしい八つの札を四枚ずつ持って、それぞれそのうちの何枚かを手に握り、合計数を予想して、外した方はその合計数だけ酒を飲む(どちらも外した場合は四杯ずつ飲む)。そして先に潰れた方が負けというルールであります。
 これまでは圧倒的な実力で勝利を収めてきた夜市ですが、しかしさすがに一藩を代表する真剣士だけに、今回は互角の勝負が繰り広げられます。

 この大蛇酒、おそらくオリジナルのゲームだと思いますが、それぞれ何杯飲めば確実にダウンするというのがわかっている状況で、そこに向かっての潰しあいというのが面白いところ。ある意味「あと何cc血を抜かれると死ぬ」のパターンなわけですが、この大蛇酒の場合、一ゲームに負けた時のペナルティの分量が、自分がどれだけベットしたかによってコントロールできるのが、ギャンブルとしてよくできていると感じます。
 そして夜市が、このルールのギリギリを攻めながらも、自分だけが有利だけになる知識でもなければイカサマでもなく、賭博師としての覚悟と、その存在すら利用した心理戦で勝負を決するのにはグッと来るのです。


『なんとショーザン』(金平守人&富沢義彦)
 本誌では現在『玉転師』(来月も掲載)の原作を担当している富沢義彦の新作は、タイトルのとおり佐久間象山を主人公にしたテンポのよい幕末コメディです。
 1851年、江戸木挽町の五月塾に一癖も二癖もある若者たちを集める象山は、松前藩の依頼で大砲を作るも大失敗。しかし全く反省しない象山に松前藩士たちは怒り心頭、五月塾に押し掛けてきて――というお話であります。

 象山が大砲製作に失敗し、本人はこの失敗が次の成功の糧となるとかなんとか嘯いてケロッとしていたとか、世間からは笑いものになって狂歌で茶化されたというのは有名な話ですが、この史実を忠実に(?)描いているはずなのに何故か無性におかしいのは、金平守人の、どこかすっとぼけた画の個性でしょうか。
 それでいて、クライマックスに象山の弟子たち+αが次々と名乗りを上げるシーンがやたら格好良く、痛快ですらあるのも面白いところ。そしてそこから何故かイイ話に落ち着いてしまうという、良い意味で落ち着きのない展開が楽しい一作であります。
(しかしいかにも意味有りげに登場しながら名前が登場しなかった人物、ビジュアル的にこの先で象山の弟子になるあの人物かしら……)


 次号は表紙が『勘定吟味役異聞』、巻頭カラーが『鬼役』。先程触れたとおり特別読切で『玉転師』、そして『凛九郎』が登場です。(『凛九郎』は前作のラストからどう繋げていくのかしら……)


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