大島幸也『平安とりかえ物語 居眠り姫と凶相の皇子』第2巻 運命の再会――からの思わぬすれ違い!?
山本風碧の『平安とりかえ物語 居眠り姫と凶相の皇子』を大島幸也がコミカライズした漫画版第2巻であります。性別を偽り、陰陽寮に入るという夢を叶えた小夜が出会ったのは、かつてその運命を占った千尋。決して正体を明かしてはならない男装ですが、千尋は妙に小夜を気に入ってしまい……
幼い頃から夜空の星を見ることに魅せられ、昼は居眠りばかりの大納言家の姫・小夜。その才を見抜いた宿曜師・賀茂信明の計らいで、忌子と言われる親王・千尋の星を観ることになるのでした。
それから四年、自分の行き先を決めようとする親に反発する小夜に対して信明が提案したのは、彼女と瓜二つながら病弱な自分の息子と、小夜との入れ替わり。これを受け容れて陰陽寮に入ることになった小夜は、睡眠不足で昏倒しかかったところを、通りすがりの貴族に保護されるのですが、その相手は何と……
というわけで、予想通りというべきか何というべきか、小夜が出会った貴族の正体は、四年前に出会った千尋その人。しかし今の彼女は、信明の息子に扮している以上、小夜の名乗りを上げるわけにはいきません。
しかもややこしいことに今の千尋は中務省の長官――つまり陰陽寮を管轄する立場であります。何故か(?)小夜を気に入った千尋の命で、星を観るようにしばしば呼び出される小夜ですが、千尋はいまだに凶相の皇子として父である帝からも疎まれ、周囲からも白い目で見られる存在。おかげで小夜もまた、周囲から浮いた存在になってしまうのでした。
その上、千尋が何かと過剰なスキンシップを求めてくるため、千尋と小夜はだ、男色の疑いをかけられることに――!
いやはや、物語的には原作と変わらないはずですが、絵が――それもなかなかに端正な絵がついた時の破壊力たるや、想像以上のものがある本作。一体どんな顔をして読めばよいのか、困ってしまいます。
いやいや、普通の男は男同士でそんなことはせんだろ、とツッコミたくもなってしまうのですが、実は千尋の方はしっかり気付いていて――と、意外と千尋はグイグイいくタイプなのに対して、小夜がてんでニブチン(こればかりは千尋が可哀想なくらいに……)で、と思わぬすれ違いが生じるのが、何とも愉快であります。
しかしそれはそれで、小夜が男装して何をしているのか、千尋が訝しく思わないはずがありません。しかも小夜の「親」として近くにいる信明は、年齢こそだいぶ上とはいえ、かなりのイケメン。一方、信明にとっては小夜はまだまだ息子の身代わりでいてくれなければ困るわけで――かくて小夜を間に挟んで、千尋と信明が火花を散らすことに……
というわけで、何となく小夜と千尋がいちゃいちゃしている(いや、千尋が一方的に空回りしていたのか……)のをずっと見せられていた気もするこの巻ですが、そんな中でも物語はクライマックスに向かっていきます。
小夜は自分の未来を掴むことができるのか、千尋の想いは小夜に通じるのか、そして腹に一物ありそうな信明の真意は……
まず間違いなく最終巻となるであろう次巻に期待であります。
『平安とりかえ物語 居眠り姫と凶相の皇子』第2巻(大島幸也&山本風碧ほか KADOKAWA BRIDGE COMICS) Amazon
| 固定リンク