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2023.04.18

「コミック乱ツインズ」2023年5月号(その二)

 「コミック乱ツインズ」2023年5月号の紹介、その二であります。

『玉転師』(有賀照人&富沢義彦)
 玉(女性)を転がして金を儲け、同時に相手の女性を幸せにする/望みを叶える東豪・お芳・十郎の玉転師の活躍を描くシリーズ、今回の舞台は吉原。なるほど、一番舞台になりそうな場所ではありますが、しかし一筋縄ではいかない物語が展開することになります。

 以前、東豪に世話されて、万亀楼で花魁となった白菊。しかし万亀楼は代替わりで主人が因業な男となり、白菊も横暴な町方同心・可児を客とすることとなります。そんな彼女を案じる十郎ですが、しかし彼女をまた「転がす」にも、一度は身請けする必要があります。
 そんなことをしても金にならないと東豪が冷たい態度を取る一方、キワモノの枕絵ばかり描く女浮世絵師・千絵にまとわりつかれて弱るお芳。他の誰にも描けない絵を描こうとする千絵に対して、東豪は……

 と、今回のゲストヒロインは二人。それも花魁と絵師と、女性であるほかは一見全く接点のない二人ですが――こう来たか、と驚かされる一石二鳥の手管が飛び出します。もっともそれも、可児の存在あってのことですが――容疑者が責め問いにかけられる姿に目をギラつかせてゾクゾクしている姿が、こう転がるか! とひっくり返りました。
 しかし千絵にとってこれで良いのか、という気もしますが、まあ楽しそうなので良いのかな――と、『ムザンエ』を読んだ後だと心配になったりもします。


『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 この号の発売と合わせて電子書籍も解禁となった本作(Kindle版の本誌でもようやく読める……)。前回、紀州に潜入した永渕は、柳沢吉保の遺命で吉宗を狙うも失敗、自分を罰しようともしない吉宗に、貫目の違いを思い知らされることになります。
 一方江戸城内での不穏な動きに対して、間部詮房が、何とか家継を守ろうとしますが――その一方で、聡四郎が自分の思い通りに動かぬことに苛立つ新井白石は、紅が吉宗の養女になった=聡四郎が吉宗に付いたと思いこみ、本作でこれまで描かれた中でも最高、いや最低のゲス極まりない表情を見せることに……

 かくて紅抹殺を決意した白石に詮房も乗り、詮房の命で紅を狙う伊賀組。しかし紅が吉宗の養女であるということは、当然ながら玉込め役に守られているということでもあって――というわけで、、次代の将軍位をねらう動きがいよいよ激化する中で、紅が思わぬとばっちりを受けることになります。
 とばっちりを受けた方ももちろんのこと、それで動かされる忍びたちもいい面の皮ですが、まあそれは上田作品ではいつものこと。今のところほとんど無敵の玉込め役を相手に、伊賀組の安否が気づかわれます。


『ビジャの女王』森秀樹
 いきなり冒頭から「冬人夏草」なるものの存在が四ページかけて語られるものの、詳細が秘されているので一体本編とどんな関係があるのか全くわからない――という大胆なオープニングとなった今回。メインとなるのは、ついにこの戦いに勝つために「攻」に出たインド墨者たちの姿であります。
 忘れかけていましたがラジンの父・フレグの軍に潜入していたインド墨者五人はある事(詳細は秘す)でフレグを怒らせて同士討ちを演じさせ、そしてラジン軍の中の墨者四人も、何やら活動を開始。そしてブブもまた、かつてのオッド姫との旅の記憶を元に、「攻」を始めることに……

 と、やっぱり墨者が一人だけではないと心強いなあ、と以前(って約千四百年前ですが)の時に比べると安心して見ていられるわけですが、しかしもちろんこの先、墨者たちの策通りに行くかはわかりません。オッド姫と遊女屋の女主人の間に生まれた不思議な関係性ともども、今後が気になるところです。


 次回、5月号紹介の最終回に続きます。


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