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2023.04.23

椎名高志『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第4巻 史実とのリンク? 思いもよらぬ大物ゲスト登場!?

 『MAO』第16巻と同時発売の『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第3巻は、キャラクターや設定こそアニメとほぼ同じものの、アニメの設定を押さえつつも、全く新たな物語を描いていくことになります。四凶を全て倒した夜叉姫たちが出会ったのは、なんととんでもない大物で……

 行方不明の両親を求め、西国に旅立ったとわ・せつな・もろはの三人。駿河で化け狸の子・竹千代、そして堺に向かうという理玖とりおんと行動を共にすることになった三人は、四凶の残る二人と対決、激闘の末にこれを下すのでした。
 そして意気揚々と旅を続ける一行は、尾張に差し掛かるのですが――ここで彼女たちを襲ったのは、陸だというのに巨大な蛸入道。しかもこの蛸入道がさる姫君を攫ったと知った一行は、姫君を警護していた武士とともに、蛸入道を追うことになります。その武士の名は――木下藤吉郎!


 というわけで、とんでもない大物(になる前ですが……)が登場したこの巻。椎名作品で秀吉というのは何とも懐かしい――というのはさておき、この藤吉郎、実はかつて犬夜叉や弥勒とも行動を共にしたことがあるというのですからさらに驚かされます。
 『犬夜叉』も『半妖の夜叉姫』も、原作では正史とのリンクはほとんど描かれず、歴史上に実在した人物も同様でした。しかしそこはスピンオフ作品のコミカライズ版だから――かどうかはわかりませんが、これは嬉しいサプライズであることは間違いありません。

 そして巧みなのは、この藤吉郎のかつての冒険を通じて、その後の(時期的にはもろはが生まれる直前の)犬夜叉と弥勒の姿を描いていることでしょう。今回登場するのはこの二人のみ、結婚してまもない男二人が折に触れて見せる姿は何とも興味深いものがあります。
 そして何よりも、作中でも彼らが語っているように、かつては「あんな」だった連中がここまで大人になったことに、何とも感慨深くなるのであります。
(それと同時に、敵妖怪の行動を通して「親」という存在を描いてみせるのがまた巧い!)

 そしてもう一つ楽しいのは、ここで登場する姫が愛矢姫であることでしょう。元々アニメの登場人物である愛矢姫は、そちらでは正直なところ物語の本筋に絡まない割りに悪目立ちするキャラで、どうかなあ――という印象しかなかったのですが、このエピソードでの役割はなかなか巧みなものであったといえます。
 何よりも助け出された後のリアクションが非常に愉快で、まず今回は得なゲスト出演であったといえるでしょう。


 しかし、愉快なばかりではいられないのが夜叉姫たちの旅であります。これまで夜叉姫たちに麒麟丸配下の四凶が倒され、そして自分が放った蛸入道を退けられ、怒り心頭に達したのは、麒麟丸の姉・是露――アニメでも大敵として立ちふさがった彼女が、本格的に動き出すことになります。

 この是露の周到な罠に追いつめられ、窮地に陥った一行。夜叉姫たちが動きを封じられ、理玖もまた深手を負った中、立ち上がったのは――ここでこう動くか! というキャラクターなのも嬉しい。アニメの方では正直なところ扱いが難しいキャラであった印象がありますが、ここでの活躍は短いながらも文句ありません。
 そしてその存在が同時に、今の是露に欠けているものを示すという展開も、また見事というべきでしょう。

 さて、この是露がかつてに比べて悪い方向に変わってしまった存在である一方で、良い方向に変わっていったのが殺生丸であります。この巻の終盤では、彼の些細な、しかし大きな変化と――そしてその変化の源というべき、りんに向けた愛の姿が描かれることになります。
 アニメとして本作が発表された時、ある意味最も反響を呼んだのは、とわとせつなの両親が、殺生丸とりんであること――というよりこの二人が結ばれたことであったと感じます。それではその二人がどのようにして結ばれることとなったのか、さらにそれに至るまでの殺生丸の変化を、本作は描いていくことになります。

 そしてその変化は、おそらくは彼の父も辿った道。この巻のラストでは、その父と麒麟丸が、妖霊星に挑む姿が描かれます。アニメでも非常に大きな役割を果たした妖霊星ですが、はたしてこの漫画版ではいかなる存在として描かれるのか――?
 少なくともビジュアルの点では非常に良い感じであるだけに、こちらも期待したいと思います。


『異伝・絵本草子 半妖の夜叉姫』第4巻(椎名高志&高橋留美子ほか 小学館少年サンデーコミックス) Amazon

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