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2023.04.10

『地獄楽』 第2話「選別と選択」

 山田浅ェ門当主の家に生まれ、自ら剣の道を選んだ佐切だが、その心には人を斬ることの恐れと迷いがあった。将軍を前にした死罪人たちの選別の場で、数々の極悪人たちを前に自問自答する佐切だが、その一人であるはずの画眉丸は、意外なことを口にする。それを耳にした佐切は……

 前回は(モブを除けば)画眉丸と佐切のみで終始しましたが、台詞の有無を除けば、メインどころはほぼ全員登場した今回。しかし物語は佐切視点で、彼女の内心の葛藤が中心に据えられることになります。

 前回はいかにも鉄の女然とした態度で画眉丸の前に現れ、彼をして死を予感させるほどの剣技を見せた佐切ですが、しかしその実、人を斬る=人を殺すことへの恐れと迷いに揺れていた彼女の心。
 浅ェ門の名を持つ者の中でも、彼女は門弟ではなく、当主の娘という立場にあったのですが――だから剣を学ばされたというわけではなく(ちなみに歴史上の「山田浅右衛門」は、実子が継いだ例はむしろ少なく、弟子の中から後継者が選ばれておりました)、血塗られた家業から目を背けず、真っ向から世間の目に挑むためだった、というのは、彼女の心の持ちようを感じさせる設定でしょう。しかしそれと人を斬って平然としていられるかはもちろん別であります。

 そんな思いの中で、死んで当然の極悪人であれば悩むことなく斬れるのではないか、と島に向かう候補者である死罪人の群れを前に思う佐切ですが、それでもやはり迷うものは迷う。しかも自分の担当であり、罪状だけ見ればまさに死んで当然の画眉丸自身が、「人を殺して何も感じないわけがない」などと言い出すのですから、彼女の複雑な心中が思いやられます。
 この辺りはもちろん結婚して以降の画眉丸の変化だとは思いますが、しかし将軍自らがけしかけての「選別」という名の死罪人同士の殺し合いの中で無関係でいられるはずもなく、他の死罪人たちの標的に。しかしほとんどやれやれ系のようなノリで殺しを厭いながらも、殺る時は容赦なく殺る画眉丸の姿に、佐切は自分に足りないものを悟って……

 と、今回のラストで死罪人代表(?)の十名が選ばれるわけですが、そちらはあくまでも顔見せレベルであって、やはり印象に残るのはもう一人の主人公である佐切が抱えた迷いであるというのは、こうして見るとなかなか面白い構成と感じます(そしてそれが必要不可欠なものであったことは、この先の物語で明らかになっていくわけですが……)。


 と、ここから先はほとんど蛇足ですが、漫画がアニメになって、原作の時点で気付かなかったことに気付くことがありますが、佐切の装束――紅白の水引っぽくて微妙にめでたく見える(しかし彼女にはよく似合う)浅ェ門としての装束は、別に佐切専用ではなく、基本的に浅ェ門共通のものであったと今頃気付きました。
 原作ではこの装束の浅ェ門たちがカラーで勢揃いした場面はほとんどなかったこともあり、またこの先コスチュームチェンジもあるために忘れていましたが、全員紅白の装束というのは、なかなかインパクトがあるものです。

 また、この回のラストで十名の死罪人が二つ名込みで読み上げられますが、アニメで見ると、幕府の役人の行動としてはかなり不自然に感じられるのが面白いといえば面白い。原作で読んだ時は別に気にならなかったのですが、声がついてみると違和感を感じるというのは、ちょっと興味深いところです。

 そして最後に厳しいことを書けば――前回もモブの作画がいまいちでしたが、それは今回も同様。しかし今回はそのモブ同士の乱闘シーンが多いため、観ていてかなり辛いものがあったというのが正直なところです(もう一つ、これも原作通りなのですがやはり作画の関係もあって非常に違和感があった、唐突に感涙する役人)。
 その分、ラストの画眉丸の大殺人いや大殺陣は見応えがあり、作画はメリハリなのだとは理解しつつも、やはりもうちょっとどうにかしてほしいと、心から思います。特に乱闘シーンは……


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