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2023.04.25

『地獄楽』 第4話「地獄と極楽」

 激突の末に和解に至った画眉丸と佐切だが、その前に奇怪な蟲と、神仏ともつかぬ異様な姿の巨人が襲いかかる。窮地に陥る二人だが、その前に死罪人の杠と、二人の浅ェ門が現れる。一方、死罪人の弔兵衛と、実はその弟の浅ェ門桐馬もまた、化物たちに遭遇することになるが……

 前回の記事で、(原作にはなかった)各話タイトルが「○○と△△」というのは、作品タイトルが「地獄と極楽」だからなのかなあ、などと書いたら、いきなりそのものズバリが来た今回。普通だったら最終回近くに来るような気もしますが、しかし今回の内容は、極楽に見えた神仙郷がその牙を剥き出し、地獄のような顔を見せるという意味では、適切なタイトルではあります。

 さて、その地獄を象徴するのが、顔や指など人体のパーツが備わった蟲たち、そして神や仏のグロテスクな戯画のような巨人たちといった、異様な化物たち。これまでは異様ではあるものの美しくはあった、様々な花が咲き乱れる世界の中で、いきなり登場したこの化物たちの姿はインパクト十分――ではあるのですが、ちょっと作画にパワーが足りない状態で描かれると、原作での異物感と生々しさの絶妙なバランスが薄れて、単に現実感のない連中に見えてしまうのがどうにも残念ではあります(単純に、妙にカラフルなのが違和感があるだけかもしれませんが……)

 さて、そんな怪物たちが登場する一方で、前回描かれたデスゲーム要素も健在――といっても今回描かれるのはは参加者たちの殺し合いではなく、それぞれの死罪人たちのキャラクター紹介。前回顔は見せたものの過去が描かれてなかった民谷巌鉄斎、杠、亜左弔兵衛の過去が描かれ、死罪人といっても(当たり前ではありますが)色々といるのね、ということをわからせてくれます。

 その中でも今回の後半の主役ともいうべき弔兵衛は、凶悪な盗賊団の首領であり、これまでの回でも容赦なく他の死罪人を手にかけてきたという、ある意味一番わかりやすく死罪人なキャラクターであります。弟の桐馬はまだ常人の感性を多分に残している印象ですが、弔兵衛の方は、生物なら殺せるな! と一人でダイナミックな感じに大暴れ。そんなヤツでも、弟には非常に優しいという一種のアンバランスさも印象的であります。
 そんな弔兵衛たちに対して、化物たちがいきなり「殺しは罪です」「虫にも命があるんだよ」と喋り始めるシーンは、これは声がついたからこそのインパクトで、桐馬がここが地獄なのかとオロオロするのも無理はないのですが、それに対して逆ギレ気味に化物を皆殺しにする姿もある意味爽快で、俺が地獄だ! と言わんばかりの姿は、今後の台風の目になることが十分予想できます。
(しかし弔兵衛、あのデザインであの髪の色だと、一番アニメっぽいキャラクターだったのだな、と今更ながらに確認)

 その一方、杠はその実力をほとんど全く見せず、話術で画眉丸を翻弄――できていないのが可笑しいですが、いずれにせよ全く信用できない同盟者という、これもデスゲームではお馴染みの立ち位置で存在感をみせつけます。

 そんなわけで死罪人たちがキャラをアピールする一方で、佐切は化物との対峙で神経をすり減らした――というだけではないのですがいきなりダウン。これではまるで第一話が強さのピークだったような扱いですが、さて……


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