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2023.04.11

「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編 第一話「誰かの夢」

 113年ぶりの上弦の敗北に、残る上弦を無限城に集め叱責する鬼舞辻無惨。一方、遊郭での死闘から二ヶ月ぶりに目覚めた炭治郎は、研ぎに出した刀を受け取るため、刀鍛冶の里を訪れる。そこで恋柱・甘露寺蜜璃や同期の玄弥と出会った炭治郎は、さらに霞柱・時透無一郎の姿を見かけるが……

 気がつけば遊郭編の放送から一年と二ヶ月が経っていたアニメ版の『鬼滅の刃』ですが、ついに刀鍛冶の里編の放送がスタートしました。遊郭編同様に第一話は通常の倍のボリューム、原作第12巻の第98話から第102話の冒頭までが映像化されております。

 この第一話、劇場公開されたこともあって、映像のクオリティは驚くほど高く、特に全体の1/3程度を占める無限城での上弦終結のシーンの気合の入りようは、尋常ではありません。無数の空間が錯綜・歪曲し、いずれが上でいずれが下か、どこからどこに繋がるかわからない、迷宮の城――その城の内部を縦横無尽に動き回るカメラワークで描いた映像は、まさに無限というに相応しいと感じます。

 そこに集うのは最強の鬼たち、壱から伍までの五人の上弦の鬼――既に参の猗窩座、そして弐の童磨は登場していたものの、残る三人は新登場、そして一気に五人勢揃いというのは、やはりテンションが大いに上がります。
 そのキャストについては既に明らかになってはいたものの、やはり上弦に相応しい力の入った声優揃い。特に、相変わらず格好良くも、いつもより低めの声の置鮎龍太郎の黒死牟、ベテランの引き出しの多さを感じさせられた(そしてこれからさらに感じさせられることでしょう)古川登志夫の半天狗は、この先の活躍が大いに楽しみになります。

 しかし映像になって、声がついて改めて感じるのは、猗窩座はビジュアル・性格ともにあれで上弦の中では最もマトモだったのだなあ、ということですが……(もっともこれは、他の面子からイジられまくったためかもしれませんが)


 さて、それ以降は炭治郎サイドに物語が移り、炭治郎の二ヶ月ぶりの目覚めと仲間たちの喜び、そして刀鍛冶の里への旅(?)と、そこでの蜜璃、玄弥との出会い――と物語は展開していきますが、この辺りは鬼滅の各章の冒頭らしく、ユルくも明るい物語展開が素直に楽しい。相変わらずの違和感を感じるほど原作に忠実なギャグ演出も、一年ぶりとあれば懐かしく感じます。
(単行本のおまけページの要素を相変わらず律儀に拾うのもまた)

 さて、鬼に上弦あれば鬼殺隊に柱ありというわけで、刀鍛冶の里編の目玉(の一人)が恋柱・甘露寺蜜璃。なんというか、初登場から入浴シーンというのが(原作通りとはいえ)ナニですが、鬼殺隊への参加理由なども含め、一歩間違えると非常に――となってしまうところが、明るく朗らかな娘さんとして好感度が高いキャラになっていたのは、これも原作通りとはいえ、声によるところが大きかったかと思います。
(しかし炭治郎が零れ出そうなものをブロックするシーンが、微妙に良い動きだったのには笑いますが、今どきあの効果音ある?)

 さて、個人的にはアニメ化した際の細かい差異が気になる――というか楽しみなのですが、例によって基本的には原作そのままのアニメ版鬼滅。そんな中で今回一番印象に残った差異は、蜜璃のトコトンヤレ節がなくなったことでありました。作中では珍しく時代を感じさせる(といってもあの時代では相当な懐メロのはずですが……)場面だけに残念ではありますが――おかげで蜜璃は恥ずかしい秘密を自白することになりましたし。

 というのはさておき、今回はもう一つ、最後の最後でオリジナルの展開があります。それはもう一人の柱・霞柱の時透無一郎が、刀鍛治の少年・小鉄を問い詰める場面で、小鉄の背後に絡繰人形が立っていることであります。
 ここでこの人形が登場するのは冷静に考えるとちょっとおかしくはあるのですが、黒死牟と、炭治郎の夢の中に現れた剣士、そしてこの絡繰人形が一話のうちに登場することには大きな意味があるわけで、これはこれで大いにアリというべきでしょう。


 そしてラストに流れるのはおそらく本来のOP。鬼滅では初の男性ボーカル入りの曲ではありますが、これはこれで良いと思います。映像ももちろん格好良いのですが、しかし炭治郎と両柱の次に活躍した玄弥の出番が少ないのが……
(それにしても玄弥が蜜璃を無視した理由も拾ってもらえるとよいですね)


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