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2023.05.14

『地獄楽』 第7話「花と贄」

 村らしきものを発見した画眉丸一行の前に現れた謎の木人と、メイと呼ばれる少女。村に案内された一行は、この島の構造や仙薬の存在、そして島を支配する「天仙」の存在を聞かされる。メイと交流を深める佐切と画眉丸。しかしその頃、弔兵衛と桐馬は天仙の前に手も足も出ず倒されていた……

 前半のクライマックスというべき前回に続き、折り返し地点となった今回は、ついにこの神仙郷の「正体」の一端が判明するとともに、前回ラストに顔を見せたこの島の支配者・「天仙」が本格的に登場し、その底知れぬ力を見せるのですが――しかし原作と構成が変わったこともあってか、何だか妙にふんわかした温泉(入浴?)回となりました。

 登場する島の住人は、前回までとはうって変わって天仙二人と喋る木人、そして謎の幼女という、それなりに言葉が通じる面々となりましたが、言葉が通じるからといって常人と同じではないのは言うまでもありません。ビジュアルからして人外(しかし一つの言葉しか喋れないということはなく、ちゃんと普通に喋る)の木人はもちろんのこと、一番常人に近いビジュアルの天仙が大問題であります。
 美女が二人絡み合ってると思いきや、いきなり甲斐田裕子から諏訪部順一に変わる――いや、性別が変わるという衝撃映像だけでなく(ちなみに天仙は、全員この二人が声を当てるというのに驚き。それぞれ個性的だっただけに、今の今まで全員同じ声という設定を忘れておりました)、そのけた外れの不死性を前に、暴力(を振るわれる)という点では定評のある弔兵衛、そして桐馬は手も足も出ずに叩きのめされ、花化していく者たちで満杯の穴に放り込まれることに……

 という十分に大変な展開なのですが、原作ではこの後にあった本作最大の悲劇というべき展開がカットされている、というよりまず間違いなく順番が変わって後に回されたため、あとはひたすら佐切たちがまったりするという展開になっているのが、妙におかしい。ここまでほとんどユルかった杠と仙汰はともかく、前回見せた強さが嘘のようにユルくだらける――というかほぐれまくる佐切をはじめとして、画眉丸までも何だか歯車が噛み合わないおかしさを見せるのを何と評すべきか。
 そしてその最たるものが、何故かねじり鉢巻を締めてメイを風呂に入れる佐切なのですが――しかしそれが彼女とメイの繋がりを強め、そしてまたそこで描かれたメイの身体にある深い傷跡から、画眉丸と妻の甘々ないや心温まる過去に繋がり、さらにそこからの画眉丸の言葉が、彼とメイを繋ぐという展開は、やはり巧みと感じます。
(それにしても画眉丸の妻の人物像は、能登麻美子声も相まって素晴らしく、あまりの良く出来た人間ぶりに実は画眉丸の脳内嫁なのではとすら――というのはさておき)

 しかしそんな絆が生まれた一方で、妻との甘い生活を思い出してしまった画眉丸は、ここで風呂に入っている場合ではないとコワい表情で思い出し――と、次回からまた殺伐とした展開に戻ることは間違いありません。
(しかしこのペースということは、仮に全編アニメ化されるとすれば、第三期までになるのかしら……)


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