「コミック乱ツインズ」2023年7月号(その一)
「コミック乱ツインズ7月号」は、表紙がそれぞれ単行本第一巻が登場の『そぞろ源内』&『真剣にシす』、巻頭カラーは『不便ですてきな江戸の町』。特別読切で『猿の剣』が掲載されています。今月も、印象に残った作品を一つずつ取り上げます。
『真剣にシす』(盛田賢司&河端ジュン一・西岡拓哉/グループSNE)
というわけで一ヶ月間をおいての登場となった本作は、小倉藩の真剣師となった夜市と、長州藩の代表・高杉との「海亀」勝負がスタート。六艘の小舟に模型の銃と鍵をそれぞれ三つずつ、亀型のケースに収めて載せ、交互に小舟を動かして相手の小舟を取り、そこに載っていた箱の中身が銃であれば自分の側の、鍵であれば相手の側のポイントになり、どちらかを三つ先に集めた方が勝ち(そして負けた方は死ぬ)というゲームであります。
なかなかにややこしいですが、簡単にいえば相手に鍵を押しつけて、自分は銃を取ると勝てるというこのゲーム、しかしもちろん相手のケースの中身はわからないわけで、その読み合いが主体となります。
しかし高杉の方はこのゲームは経験者であるのに対し、夜市は初めてと、有利不利は明らか(これ、運営に問題あるのでは……)。実際、高杉は経験者でなければ思いつかないような(そんなのあり!? と言いたくなるような)ルールの穴を突いた戦法を見せるのですが――賭け事に関しては天才的なセンスを持つ夜市が何も仕掛けないはずがないわけで、勝負はまだまだわからない状況であります。
そして今回、夜市の望むもの――というより望む世が語られる一方で、高杉はやはりあの高杉(の縁者)の様子で、その辺りのぶつかり合いもこの先気になるところです。
『かきすて!』(艶々)
一見田舎から出てきた少女、その実は公儀隠密であるナツの旅は続き、今回の舞台は大津であります。
ここで絵師を表の顔にしている草からナツが託される予定だったのは、土地の商人たち十三人の行状を調査し、それを密かに描いた十三仏の大津絵。しかしあと一人というところまできて、怪我をしてしまった草から、ナツは代わりに調査を頼まれることになります。かくて強面で知られる最後の一人の行状を調べるため、遊郭に忍んだナツが見たものは……
大津絵というのは、作中で解説のあるとおり、当時人気のあった大津土産の絵画のこと。元々は仏画から始まったそうですが、今回の題材となる十三仏は、人の初七日から三十三回忌までに対応する十三体の仏様を描いた図で、特に人気があったようです。
が、今回ナツが目撃したものは、極楽といえばごくらくですが、一緒にしたら罰が当たりそうなとんでもない光景。もともと艶笑譚的色彩の強い本作ですが、今回はその中でも過去一刺激が強かったのではないでしょうか。
(それでも何となくオチでいい話的にまとめるのもまたおかしい)
『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
しばらく引っ張ってきた三村家親暗殺も、今回ついに成功。戦国史上初の銃による暗殺者となった遠藤兄弟は、成功した後の方がビビっていたりしましたが、しかしこれまでも描かれてきたように有能な家臣には報酬を惜しまないことが、直家を単なる陰謀家に留めない美点といえるかもしれません。
一方、これまたしばらく引っ張ってきた三浦貞勝の未亡人・お福の去就は、まだ決着しないようですが……
などというところで、身も蓋もないヒドいオチ(史実)がつくのも、本作らしいように思えます。
次回に続きます。
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