『アンデッドガール・マーダーファルス』 第4話「真打登場」
ゴダール卿をはじめ、城の人々を集めて謎解きを始める鴉夜。鴉夜の感じた七つの疑問の答えが示される時、意外なトリックと犯人の正体が明らかになるが――鴉夜に襲いかかる真犯人を、津軽が阻む。「真打登場だ」という鴉夜の言葉通り、津軽の力が発揮される……
「吸血鬼」のエピソードもこの三話目でラスト、いよいよ解決編です。アバンタイトルの時点から、鴉夜が関係者を一堂に集め、まさに「名探偵、皆を集めてさてといい」を地でいくような展開であります。
ということは、基本的にひたすら鴉夜が語りまくることになりますが、この辺りを如何に飽きさせずに見せるかは、アニメ化の腕の見せ所。ある種の図解(例えば館内での事件発生時の住人の位置関係など実に面白い)として見せたり、カット割りの面白さで見せるなど、これまでも回で見せたセンスはもちろん健在であります。
尤も原作に比べると、実はかなり台詞や説明はカットされているのですが、その辺りを可能な限り不自然さを感じさせないように刈り込んでいるのもさすがというべきでしょう。とはいえ、さすがに説明があまり長く続くのは、見ていて少々苦しく感じたのもまた事実ですが……
(また、第二話でわざわざ言及された、死体の傷の左側の方に出血が少なかった理由について説明されなかったのはいかがなものかな、とは思います。映像を見ればなんとなくわかるものの……)
かくて理路整然と一つ一つ謎を解き明かしてみせる鴉夜によって、特定された犯人。しかしもちろん犯人が黙っているはずもなく、鴉夜の口を封じんと――と、もちろん鴉夜のお供も黙っているはずがありません。ここでタイトル通りの「真打登場」であります。
この解決編の見所の一つが鴉夜の推理であることは間違いありませんが、もう一つはこの津軽の暴れっぷり。彼が化け物を素手で殺せるほどの、人並み外れた戦闘能力の持ち主であることは、既に第一話で示されましたが、しかし異国の怪物――それも王を名乗る者に通じるか? というこちらの疑問と期待にきっちり応えるのはさすが真打というべきか、人外相手に空中コンボを決めたりやりたい放題であります。
別に戦闘モードだからといって真剣になったりするわけでもなく、ただ上着や手袋、靴を脱いだほかは、いつものヘラッとした態度のままで凄まじい暴力を決めてみせる津軽。それが彼の実力と異常性を際立たせますが、その最たるものが、相手を叩きのめしながらの長口上であります。あたかも彼が居た見世物小屋のそれのように長弁舌を振るう様は、今回のクライマックスといってもよいでしょう。
が、実は残念だったのは、この長口上に合わせてのバイオレンスで――原作では上段に口上、下段に津軽が一方的に相手を叩きのめす様が描かれ、それが同時進行するという異常さを見せてくれたのですが(電子書籍では段組みが崩れないように画像ファイルで収録)、これをアニメでは如何に再現するのか!? と思いきや、口上の内容の映像化に集中してしまったのがちょっと拍子抜けでした。
もちろん映像的には楽しく(原作第四巻を読んでいるとちょっと感慨深いカットもあって)巧みなのですが、津軽の振るう暴力が直接描かれなかったために、色々な意味で案外あっさりやられたな? という印象になってしまったのは勿体ないと思います。
(この最中のゴダール卿たちの反応については、違和感を感じる方はいるかもしれませんが、これはこれでリアルだとは感じます)
などと、前半後半とも、いささか期待が大きすぎたかな、という印象はあるものの、それでもやはりこの作品の、このアニメ版の冒頭を飾るエピソードとして、魅力的な内容であったことは間違いありません。一度聞いたらゴダール卿の名前は決して頭から離れなくなる、あの恐るべき結末もきっちり再現されていましたし……
(といいつつ、あの人物が親和派のゴダール卿をわざわざ誘いに来るというのは、敵の陣容的にもいささか不自然ではなかったかな、と感じます。このアニメ版では、ゴダール卿とあの吸血鬼との因縁は語られてはいないとはいえ……)
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