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2023.08.19

「コミック乱ツインズ」2023年9月号(その二)

 「コミック乱ツインズ」9月号の紹介の後編であります。

『そば屋幻庵』(かどたひろし&梶研吾)
 一年二ヶ月ぶりの登場となった今回は、今回は玄太郎の嫡男で牧野家の現当主・栄次郎を中心としたエピソード。勘定方として部下の分まで代わって仕事を片付けたりと非常に忙しい日常を送る栄次郎ですが、ようやく休暇を与えられたと思えば、お役目上の接待のために、駿河や伊豆の食材を調べに行くことに――と、そこに玄太郎と平吉が同行するという趣向です。

 こうした流れのために、どちらかというとそばよりも、三島の鰻や沼津のギンデイなど、各地の名物が印象に残るのですが――しかししかしそれがどれを見ても旨そうなのがたまりません。もちろんそばの方も、大磯の生しらすと大根おろしを載せたそばなど、実に食べたくなるのですが、しかしラストに描かれる「かけ」が一番に思えるのは、本作ならではのマジックでしょう。

 そしてそんな流れの中で、お堅い栄次郎が徐々にほぐれていき、そして一見正反対の玄太郎という人物を、誰よりも理解していることが描かれるのも実にいい(まあ、確かに玄太郎は色々とズルい!)。
 しかしそれ以上に、藤丸姐さんが幻庵のそばを一言で評する言葉はこれ以上ないほど的確で、幻庵の方の最大の理解者はこの方だなあと感心するのです。


『真剣にシす』(盛田賢司&川端ジュン一・西岡拓哉/グループSNE)
 前回、騙し合いの末に長州を破った夜市ですが、今度の相手は薩摩。交易路を賭けての対戦に、薩摩に向かう夜市一行ですが――いきなりそこでチェストォな武士たちの歓待を受けることになります。そして薩摩隼人の宴会といえば、そう肝練り――というわけで(?)、点火した火縄銃を上から吊してグルグル回しながら飲むという、あたおかな状況になるわけですが、隣の人間が頭打ち抜かれても平然としている夜市もまた大概であります。
 そんなこんなで島津斉興と対面した夜市ですが、ここで姿を現した薩摩の真剣士は――調所広郷! 広郷が博奕というのは意外なようなそうでもないような、という感じですが、しかし駆け引きの上手さと修羅場を潜った胆力という点では、納得の人選ではないでしょうか。

 そしてここで繰り広げられる勝負は「菱刈勇士」――プレーヤーは金山に潜る鉱夫となって、坑道に模した襖を開けるか止めるかを宣言、開けて宝を持った腰元が出てくればポイント、山賊役の武士が出てくれば(物理的にも)ダメージ――というルールであります。
 今回はルール紹介のため勝負はこれからですが(宝が出るか山賊が出るかはどうやって決まるのか?)、さて今回から既に勝負の伏線が張られているような気がするだけに、油断はできません。


『カムヤライド』(久正人)
 天津神との五対五の激闘に辛うじて勝利を収め、一時の安らぎを得たかと思いきや、ヤマトの兵たちに捕らえられてしまったモンコたち。「殖す葬る」をしたりしていたのですっかり忘れていましたが、モンコたちはお尋ね者――特にモンコはすぐに処刑されてもおかしくない身ですが、何と大王にストップをかけたのはタケゥチだというではありませんか。

 実は、モンコと同一人物だとばかり思われていたたノミの宿禰の足跡を追う中で、逆に同一人物ではありえない証拠を見つけてしまったタケゥチ。彼の職業倫理からすれば、その事実を無視したままモンコを殺させるわけにはいきません。折しも国津神と蝦夷が同盟を組んだ情報を掴んだ彼は、東征軍を率いるヤマトタケル=神薙剣のパワーアップ手段として、大王にある提案を……

 と、先にノツチとモンコの出会いが描かれたことで、既に解決したような気分になっていたモンコの過去と彼の正体。しかしここでタケゥチが提示した数々の事実により、改めて、いやこれまで以上にその謎は深まることになります。
 特に驚かされるのは、モンコ本人とは別にノミの宿禰が存在し、しかも第三勢力的に活動しているらしきことですが――それは何を意味しているのか。とりあえず、ネガカムヤライド登場の可能性が高まったのでは、と勝手に期待しているところです。

 何はともあれ次回から新展開、再び共に旅することになったモンコとヤマトタケルですが、はたして二人の関係はかつてのように戻ることができるのか。ヤマトタケルが救われる日を祈りたいと思います。
(にしてもトレホ親方さぁ……)


 次号は表紙が『鬼役』、巻頭カラーが『真剣にシす』であります。


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