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2023.08.06

『アンデッドガール・マーダーファルス』 第5話「倫敦の不死者」

 仇敵の手がかりを追ってロンドンを訪れた〈鳥籠使い〉一行は、怪盗ルパンが狙う人造ダイヤ「最後から二番目の夜」を守りたいという大富豪フォッグ氏から依頼を受ける。厳重な警備に守られたフォッグ邸には、彼らの他に名探偵ホームズ、さらにロイズのエージェントたちまでもが現れるが……

 いよいよ今回からアニメ版第二章というべき「ダイヤ争奪編」に突入。原作では第二巻に当たりますが、とにかく敵も味方も多士済々、夢のクロスオーバーの連続で、個人的には「本編」といいたくなってしまうエピソードだけに、期待は膨らみます。
 その初回となる今回は、キャラクターと舞台の紹介編というべき内容で、物語的にはプロローグといった印象ですが、とにかく豪華すぎるキャラクターを見ているだけで満腹になります。

 なにしろ、「敵」となるのは怪盗紳士アルセーヌ・ルパン(「怪物」級の存在だからと〈鳥籠使い〉が駆り出されるのも納得)とオペラ座の怪人、ライバル役としてシャーロック・ホームズとワトスンというだけでニッコリですが、脇を固めるのが『八十日間世界一周』のフィリアス・フォッグとパスパルトゥーというのも嬉しい。さらに今回の時点ではまだ顔見せですが、そこに「教授」とジャック、カーミラにクロウリー、人造人間が加わり(さらに本作オリジナルのロイズ保険機構のエージェントもいますが、この中では色々な意味で分が悪すぎる)、あの主役トリオもうかうかしていられないような濃すぎる面子であります。
 さらに嬉しいのは、この綺羅星の中でも中核と言うべきホームズを三木眞一郎(『エレメンタリー』を思い出しますな)、ルパンを宮野真守と、芸達者が演じていることで――落ち着いた中にも鋭利さと尊大さを感じさせるホームズ、気障で才気煥発な若きルパンと、それぞれ口を開いて一言話すだけで、キャラクターのイメージのど真ん中を行く存在感で、それぞれが主役の作品を観たい! と思わされるほどであります。

 さて、内容の方はといえば、さすがにこれだけの面子をまとめるためか、本筋はきっちりと踏まえながらも、かなり細部はばっさりと剪定した印象があります。会話劇が楽しい本作だけに、細かい台詞がカットされているのは少々残念――というよりむしろ勿体無いところですが、まあ放っておくと津軽が延々とボケ倒すので仕方ないといえば仕方ないのでしょう。
 個人的には冒頭のホームズ&ワトスン組の「えっ、この二人、滅茶苦茶武闘派……」という、「この世界」を感じさせるバトルシーンが丸々カットされたのは残念ですが、それは後のお楽しみということなのでしょう(その後の護送車の中のシーンは、むしろアニメの方がテンポが良くて好きかもしれません)。もう一つ冒頭で、ルパンとファントムが会話している場所が、エギュイ・クルーズといいつつ船の上だったのには、意味がわかるまでしばらくかかりましたが……(地口とは津軽か!)

 ちなみにこの第五話で大体原作の内容の五分の一といったところですが、さて全体でどのくらいのペースで描いてくれるのか――そして何よりも、この先も見せ場だらけの物語をどのように捌き、魅せてくれるのか。これまででアニメの内容にはほとんど不安はないので、頭脳戦も肉弾戦もパンパンに詰め込まれた物語の先行きを、ただただ期待して待ちたいと思います。


 しかしアニメではサラリと流されましたが、冒頭で教授たちの居所を知るために鴉夜たちはステッキ屋から顧客名簿を盗み出しているわけで、時と場合によっては簡単に泥棒側にも回る探偵というのは、混沌とした本作の主役にはやはり相応しいのかもしれません。


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