『るろうに剣心』 第七話「人斬りふたり」
薫を人質に取った鵜堂刃衛の呼び出し場所に向かう剣心。薫を救うために抜刀斎に戻る決心をする剣心だが、まだ戻り切っていないと見て取った刃衛は薫に心の一方をかけ、呼吸困難な状態にするのだった。怒りで完全に抜刀斎に戻った剣心は刃衛を圧倒、その刃が刃衛に振り下ろされるが……
というわけで刃衛編の後編となった今回、冒頭からオリジナル展開として、新選組時代の刃衛が、剣心いや抜刀斎と対峙していたことが語られます。
しかし平隊士の刃衛は四人がかりで抜刀斎に襲いかかるも、壁を走るわ上から襲いかかってくるわの抜刀斎の幕末クオリティの前に惨敗。自分以外の三人は殺され、刃衛のみは伝令役として生かされる――って抜刀斎の残酷悪役ムーブに引きますが、この場合刃衛は士道不覚悟で切腹にならないか心配になります(というか、もしかしてこれがきっかけで刃衛は新選組を抜けたのでは……)
さらに恐ろしいのは、前回剣心が「奴は新選組隊士だったそうだ」と伝聞で言っていることで、もしかして刃衛と既に会っていると意識していなかったのでは……
と、いずれにせよ刃衛の壮絶な一方通行ぶりに巻き込まれた薫こそいい面の皮ですが、もちろん一番怒っているのは剣心。口調も一人称「拙者」の語尾「ござる」ではなく、一人称「俺」で語尾は普通という、抜刀斎状態――ということは、剣心はキャラ作っていたのか、と今更ながらに気付かされます――となり、激しい剣戟を繰り広げます。
(今回のアニメ版の特長の一つは、連撃や一瞬の交錯などで済まさず、斬り合いの中を割っていることですが、今回もなかなか見ごたえがある殺陣でした。まあ、肩を刺されてああいう風に吹っ飛ぶかは疑問ですが……)
しかしそれでも満足できない刃衛が一種の舐めプというか、抜刀斎を本気にするために、薫を心の一方で呼吸困難にして、自分を殺すか薫を見殺しにするかと突きつけてしまったからさあ大変。普通、不殺の誓いをしているキャラがこういう選択を迫られたら色々と逡巡するものですが、抜刀斎の場合、殺すと即断。そこから鉄の棒というか鉄の板で躊躇うことなく相手の鼻をぶっ叩きにいく冷徹さには、見ているこちらもゾッとさせられます。(鼻血が出ると色々と運動能力が落ちることまで計算していたのかしら……)
もちろんこの剣心/抜刀斎の姿は、刃衛が最後に残した「人斬りは所詮死ぬまで人斬り」という言葉を体現するものでしょう。しかしその一方で、そして剣心を人斬りに戻したくない一心で心の一方を解いた薫の姿を見れば、そこから逃れる道もまた、同時に提示されているといえます。そしてこの薫の存在が、自身の言葉通りに人斬りのままで死んだ刃衛と、剣心を分かつものであるのでしょう。
(そしてこの薫を念入りにアレした人誅編は、この辺りをさらに突き詰めたものだったのだなあ、と再確認)
原作では分量的にここで一区切りということもあり、物語のテーマを集約してみせた感のあるこのエピソード。原作であった二人の朝帰りオチがなくなったのはちょっと残念でしたが、一クールの折り返し地点に相応しいエピソードだったかもしれません。
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