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2023.08.17

『アンデッドガール・マーダーファルス』 第7話「混戦遊戯」

 密閉された余罪の間に流れ込む水が引いた時、その場から消えていた金庫。状況が二転三転する中、ダイヤはルパンの手に渡るが、思いもよらぬ手段で鴉夜が逃げたルパンの居場所を突き止める。ルパンを追い詰める津軽だが、そこに屋敷に五人の怪人が乱入する。かくて屋敷の各所で、新たな戦いが……

 金庫がある「余罪の間」の鍵を内側から射撃して壊し、中に入れなくするという無茶苦茶な対策を取ったホームズに対し、ルパンは部屋に唯一ある空気取りの穴から水を流し込むという挙に出て――という展開から始まった今回。ロイズのエージェント、ファティマの矢によって水は抜けましたが、そこからさらにホームズとルパンの一進一退の攻防が繰り広げられ――と、この辺りは今回一回分をかけるくらいでじっくり描かれるのかと思いきや、かなり圧縮された印象です。

 特にホームズは、ルパンが変装した人物を捕らえての「諸君、アルセーヌ・ルパン君をご紹介しましょう!」の定番ムーブは実に良かったのですが、その後のルパンとのやりとりが削られたおかげで、名探偵の印象が薄くなったのが残念なところです。ルパンが<最後から二番目の夜>を奪取するくだりも、何故ルパンが在処を見抜くことができたかという説明がなかったので――原作では原典の名作をひきあいにした、ルパンの心憎い説明があったのですが――一方的に出し抜かれたように見えてしまうのが、ファンとしては残念です。

 もっとも、ホームズの代わりに(?)これまで後ろに下がっていた分、真打登場とばかりに活躍を見せるのは<鳥籠使い>。津軽の名調子による「釜泥」に合わせて明らかになった鴉夜の秘策(その直前の鴉夜の表情が描かれるのも楽しい)が炸裂し、まさに「首を突っ込んで」きた鴉夜によってさしものルパンもたじたじになるのは、本作ならではの楽しさでしょう。

 が、そこにロイズのエージェントが、さらに外部から五人の怪人が乱入して――と、ミステリから異能バトルに突入する形でまさに大混戦の後半戦に突入。
 津軽vsルパンvsレイノルド
 ファントムvsファティマ
 静句vsカーミラ
 ホームズ&ワトソンvsクロウリー
 バトル的にはまさにここからが本番、よくぞここまでとんでもない(というか混沌とした)対戦カードを――と唖然としますが、個人的に感心したのはファントムの描写です。

 これまでは普通に良い声という感じのファントムだったのですが、乱戦の中でフォッグ邸の倉庫という閉鎖空間でファティマと対峙した途端、声の深みといい響きといい、まさに「オペラ座の怪人」! と思わされるのには、ファンとして実に嬉しい。閉鎖空間で美女と対峙というのは、彼のために作られたステージだけに、この後の活躍にも期待したいと思います。

 また、ネットでの反響などを見ると、唯一(というわけではないですが)実在の人物なのに、いまいち知名度が低いのが悲しいクロウリーですが、劇中のイメージカットでオカルトファンにはお馴染みの、妙に美形な見下ろし写真を彷彿とさせるものがあったのはちょっと嬉しかったところではあります。
(指パッチンで大量虐殺というのは、全く関係ない作品を思い出す、というのはさておき……)


 何はともあれ、卍巴のバトルはここからが本番。ペース的に次回で「ダイヤ争奪編」はラストではないかと思いますが、もう少しじっくりやって欲しかった――とは思うものの、気が付けばもう話数的に折り返し地点を過ぎたと思えば仕方ないのかもしれません。
 クライマックス連発であろう次回も楽しみです。特にホームズの活躍が!


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