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2023.09.08

『アンデッドガール・マーダーファルス』 第10話「霧の窪地」

 <牙の森>の謎を知るため、ホイレンドルフで起きた人狼事件の犯人を突き止めることを請け負う鴉夜たち。外から来た住人たちに話を聞く一行だが、その前にロイズのエージェントたちが現れる。さらに村に人狼が出現、戦いを挑む津軽と静句だが、巻き込まれた鴉夜を救うために静句は滝壺に……

 本作も今回を入れて残すところあと四話、「人狼編」は起承転結の「承」といったところ。ホイレンドルフ村で今起きている人狼による殺人事件、そして八年前に起きた人狼退治にまつわるディテールが、明らかになっていきます。
 そんなわけで今回の前半は、関係者・容疑者への聞き込みパート。探偵ものの定番というべき展開ですが、その対象となるのは、「よそ者」たち、すなわち素性がはっきりしている村土着以外の、村の外からやってきた者たち――技師のクヌート、画家のアルマ、医師のハイネマンの三名であります。
 聞き込みというのは基本的に地味なものではありますが、ここでは八年前のエピソードを絡めたり、津軽と鴉夜のボケとツッコミを交えることによって、退屈さとは無縁なものとしているのは、毎度のことながらさすがというべきでしょう。

 そして後半は一転、津軽たちが二つのバトルを繰り広げることになります。一つは前回ラストに顔を見せたアリス・ラピッドショットとカイル・チェーンテイル、ロイズのエージェントの二人――というか、正確にはアリスと津軽との対決。文字通り前哨戦というべき内容ではありますが、室内での(はた迷惑な)一瞬の攻防というシチュエーションは、津軽とアリスの正反対のキャラもあってなかなか楽しめました。
 が、個人的にはそれよりもホームズの出番が台詞で済まされたことが、やはり残念だったのですが……
(あれじゃまるで<鳥籠使い>への敵愾心から情報売ったと勘違いされるのでは。ホームズのパワーアップ宣言や、ワトスンへの非常にエモいホームズの台詞があったのに!)

 それはさておき、もう一つのバトルが今回の本命というべきか、ついに津軽と人狼が激突。ある意味意外な(しかし疑おうと思えばいくらでも疑える)シチュエーションで出現した人狼に対して、いつもの戦闘スタイルというべき身軽になって挑む津軽ですが――彼の鬼の力を持ってしても、というより彼の鬼の力をブロックしつつ互角以上に戦う姿は、人狼という存在の恐ろしさを十分アピールしていたといえるでしょう。
 別に一対一の見世物でもなし、と遠距離から放つ静句の銀の弾丸の一撃も効かず、さらに気合いの入った作画からの接近戦も及ばず――と、ここで人狼のもう一つの恐ろしさ、人間並み(以上?)の狡猾さが発揮されることになります。ここで人狼が<鳥籠使い>というより静句の最大の弱点が――その直前のシーンでの隠せないイラつきっぷりはある意味伏線と言うべきか――突いたことで、物語は意外な展開を迎えることになります。

 ここまでで原作の約1/3、ここから先の怒濤の「転」にも期待が持てそうです。


 ちなみにカイルはプロポーション的に性別変わったかと一瞬思いましたが、あれは純粋に胸の筋肉ということでよいのでしょうね……


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