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2023.09.02

『るろうに剣心』 第八話「逃走麗女」/第九話「御庭番強襲」

 賭場に出かけた剣心と左之助の前に現れた謎の女・高荷恵。彼女を捕らえようとする男たちを撃退する剣心たちだが、相手は武田観柳の私兵だった。恵を神谷道場に匿う剣心たちだが、そこに御庭番衆・火男が襲撃を仕掛ける。剣心と左之助が火男を倒す一方で、恵を庇った弥彦が毒に倒れ……

 第八話・第九話をまとめて紹介。第八話から、原作では単行本約二巻を費やした長編エピソードに突入、敵の数もさることながら、より入り組んだ物語が展開することになります。

 そしてここからは高荷恵・四乃森蒼紫・武田観柳と、三人の(メイン)キャラクターが一気に登場。その中でも、この二話で中心となるのはやはり高荷恵でしょう。今回のエピソードでは、剣心たちを戦いに巻き込む役回りですが、黒笠の時の薫のように囚われのヒロイン役(も後に演じることになるのですがそれはさておき)とは少し違い、一種のトラブルメーカーという役割なのは、薫との差別化が為されているというべきでしょうか。
 とはいえ、そのトラブルメーカーぶりが、狙い通りとはいえ色々と鼻につくのも事実。阿片製造の片棒を担いでいたのはともかく(ともかく!?)、蓮っ葉で悪ぶった言動はあまり印象が良いものではなく、連載当時もそうですが、いまのファンにどう受け止められるのか気になります。もちろんその辺りは彼女の悲しい過去によるものではあるのですが、同じ幕末という時代に翻弄されて様々なものを失っていても、陽性のキャラクターであった一方で、恵の場合は自分で戦う力を持たないキャラということもあってか、どうにも陰性の印象があります。

 ちなみに個人的なことを言えば、私が原作を読んでいた時には、言動やキャラクター性よりも、(ある意味濃い)ビジュアルがちょっと苦手だったのですが――このアニメ版では今の絵柄になっていることもあって、もしかすると原作から一番イメージが変わったかもしれません。
(ビジュアルが変わっているといえば、原作初登場時の蒼紫ですが――こちらが変更されていることは言うまでもなく)

 一方、蒼紫と観柳の方は、まだあまり出番は多くなく、顔見せという印象もありますが、観柳の声が『武装錬金』のパピヨン役だった真殿光昭のにはひっくり返りました。既に第九話のCパートでは(オリジナルで)例のブツを手に入れて大ハッスルする姿が描かれ、その後の各メディアや北海道編から逆算したこの先の暴走っぷりに期待が集まります。もっとも、後のイメージからしてみると、今回のエピソードでの外道ぶりはかなりドン引きするわけですが――特に第八話でのヘマをした子分の扱いなど、洒落になりません。
 しかし観柳といえば、またかなり息切れしてきた作画が、観柳のところで特に目立つのも気になるところではあります。いや、火男も大概でしたが――というか、以前の比留間弟もひどかったことを考えると、もしかして……

 ちなみに火男といえばvs剣心のくだり、原作では火男のことを大道芸呼ばわりしつつ、剣心の方がビジュアル的にはかなり凄いことになっていたのが、今回のアニメでは比較的抑え目になっていたのが面白いところであります。
 また、変更といえばもう一つ、剣心が恵が会津出身者だと気付く理由が変更されていましたが、これはこれで厳しい気がするものの、原作の描写はさすがにちょっと無理があったという印象だったので納得であります。
(出歯亀は変わっていませんでしたが――この辺はまあ、現代語訳が施されているのだと思うことにします)


 何はともあれ、この二話で何となく話はまとまった感じではありますが、もちろんこのエピソードは、ここからが本番。先に触れたCパートの観柳もそうですが、蒼紫の本領発揮も楽しみなところであります。


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