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2023.09.16

「コミック乱ツインズ」2023年10月号(その二)

 「コミック乱ツインズ」10月号の紹介の後編であります。

『ビジャの女王』(森秀樹)
 ジファルの手術により、辛くも一命を取り留めたブブ。時に善き魂を示し、時に奸悪な心を見せるジファルの過去に疑問を抱いたブブは、ジイに彼の過去のことを訪ねるのですが――というわけで今回のメインはジファルの過去編です。

 実はモンゴルに滅ぼされたオアシス都市・サドラの王子だったジファルは、同い年のラクダの世話役の子・イーブンと共にビジャに向けて苦しい旅を続けて来たのですが――ラクダ酔いでジファルはダウン。ビジャに助けを求めたイーブンですが、ジファルは命を取り留めたものの、イーブンの方が命を落とし……

 と、ブブならずとも怪しいと思ってしまうところですが、はたして彼の過去に本当にあったのは何だったのか。その辺りは予想通りではあったのですが、イーブンという友の名が皮肉に感じられるその過去には、なるほどさてこそは、と納得であります。
 とはいえ過去に秘密を持つのはブブも同じ。記憶喪失だという彼の過去の真実が明らかになるのは、まだ先のようです。


『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
 三村元親の大軍が迫る中、お福へと一世一代の告白を敢行した直家。普段のキャラとは全く似合わない純情路線の直家に対して、お福の答えは……
 とそれはまあ予想通りではあるのですが、彼女の方も打算抜きでも色々真面目に直家ラヴなのは、逆に色々心配にならないでもありません。

 しかしここで気付かされるのは、家と夫を失い、息子を抱えてなお気丈に生きるお福の姿が、直家の母に重なるということであります。あるいはだからこそ直家はお福に惹かれた――というのは言い過ぎかもしれませんが、戦国乱世を自分のやり方で生き抜こうとする女性たちの姿には、胸を熱くさせられるものがあります。
 そして胸を熱くさせると言えば、お福の子・桃寿丸と直家の「約束」で――こちらは間違いなく直家がかつての自分の姿を見ての行動と思えば、陰謀の鬼が見せる真摯な誓いの姿は、感動的ですらあります。


『カムヤライド』(久正人)
 前回はタケゥチが語る意外な真実と、モンコとヤマトタケルの新たな旅立ちが描かれましたが、今回はその旅立ちの前に、もう一人の重要人物・オトタチバナの過去が描かれます。

 かつては平凡な村娘――ではもちろんなく、その剛力で暴れ回り、周囲に手を焼かせていたオトタチバナ。ついに、村を襲う国津神の生贄に選ばれてしまった彼女ですが、もちろん黙って生贄になるはずもなく、緊縛ノルマもほとんど一瞬のうちに、素手で国津神を叩きのめすという豪腕ぶりを発揮します。
 あるいは神話的偉業と讃えられてもおかしくない彼女の勝利ですが、しかし神の猛威を恐れる人々にとってはとんだ罰当たり。身内にまで石もて追われ、荒んだなりで放浪する彼女の前に現れたのは……

 かつて、記憶喪失であり本能のままに暴れ回っていたモンコがヒーローとして立ち上がったのには、戦う理由を与えた恩人・ノツチの存在がありました。それと同様に、オトタチバナにもまた戦う理由を与えてくれた人物がいたというのは、少々意外のようでもあるものの、彼女の純粋さを思えば、むしろ納得させられるものがあります(しかしどちらもその相手が単純に異性ではないのがちょっと面白い)。
 問題は、その相手は今――ということですが、それを取り戻すためにモンコ・ヤマトタケルに同行するというのは納得の展開ではあります。いよいよ三人のヒーローが勢ぞろいし、新たな旅の始まりであります。

(しかし、モヒカンではないオトタチバナは普通にカワイイ……)


 次号は表紙が完結目前の『勘定吟味役異聞』、巻頭カラーは『そぞろ源内 大江戸さぐり控え帳』。特別読切で『口八丁堀』が登場であります。


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