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2023.09.23

『るろうに剣心』 第十二話「御頭・四乃森蒼紫」

 御庭番衆たちを倒し、ついに四乃森蒼紫と対峙した剣心。小太刀と拳法を自在に操る蒼紫に苦戦する剣心は、蒼紫が幕末に機会を与えられなかった無念を晴らすため戦っていると知る。激闘の末、蒼紫の繰り出した奥義・回天剣舞に一度は倒れつつも、ついに蒼紫を倒した剣心だが、そこに観柳が現れ……

 現在のエピソードもおそらくはあと二話ということで、ラスト一話前に相応しい激闘――事実上の大将戦である剣心vs蒼紫が繰り広げられる今回。これまで自分で動くことはなかった蒼紫ですが、御庭番衆の頭領に相応しい実力を発揮、その前に剣心は般若との戦いでダメージを負っていたとはいえ、ほとんど対等の条件で戦って剣心と互角以上の戦いを見せたのは、やはりこれまでで最強の敵と呼んでよいでしょう。
 そんなわけで激闘を繰り広げた剣心と蒼紫ですが、原作では今見てみると以外と地味な戦いが、今回のアニメでは、これまで同様、きっちり動きを見せる殺陣になっているのは見所の一つといえます。

 しかし個人的には、その戦いの最中で語られる、蒼紫の「動く理由」が、より印象的に感じられます。江戸城を守る御庭番衆として最強を自負しながら、慶喜の敵前逃亡から恭順、そして江戸城無血開城によって戦う機会を奪われた蒼紫たち。自分たちが戦っていれば幕府が勝っていたはずという無念の想い、やり場のない闘争心を持て余していた彼らの気持ちはわからないでもないものの、しかしその戦いを起こしていれば生じていたであろう周囲の犠牲を考慮しないその態度は、やはり一種の妄執と感じます。
 どちらかというとその後の、就職先のない他の御庭番衆を抱えて――という方が印象に残る蒼紫ですが、やはりここで剣心を激昂させたその妄執こそが蒼紫の道を誤らせた大きな理由であり、そして前回左之助が式尉に語った剣心と蒼紫の違いが、図らずも正鵠を得たものであったことを示すものでしょう。

 そんな蒼紫を止めるには、剣で以て敗北を与えるしかないわけですが、しかし蒼紫の流水の動きに翻弄され、そして回転剣舞を喰らって一度はダウンした剣心。しかしそこから蒼紫の攻撃に合わせて拳に拳を叩きつけること二回、そして自分の刀を捨て、えっ、この構えは波動拳!? と一瞬素で思ってしまうような両手の構えから、蒼紫の小太刀をガッチリと両手で受け止めたではありませんか。真剣白刃取りかと思いきや、そこからさらに両手の指を咬むように組み合わせて、相手の武器の動きを封じる。これぞ飛天御剣流「龍咬閃」! ――知らない技です。
 実はこれは原作者考案の新技ということで、知らないのも当たり前ですが、原作ではここは普通の(?)真剣白刃取り。「剣術五百余流派通じて唯一の徒手空拳技」と称していましたが、まあまず唯一ではないので、ここで修正ともども新技に変更するのは良いかと思います。
(後に白刃取りのエキスパートになる人間が後ろで見ているので、普通の白刃取りをしても――という気もいたします)

 と、実はこの蒼紫戦決着まででAパート。もう今回一回分使うかと思いましたが、以外に早い決着であります(密度が濃かったので不満はありませんが)。だとすればBパートは――そう、観柳の出番であります。もちろん彼一人ではなく、あの相棒とともに。
 以前、Cパートでわざわざ登場を予告されていた観柳最愛の相棒――ガトリングガン。その後のあれこれによって、もはや観柳といえばガトリングというレベルにまでなってしまったガトリングガンが文字通り火を噴きます。観柳の「ガトガト」連呼付きで!

 絶対やると思いましたが、原作には当時なかった――後の宝塚版で登場、そして北海道編を経ての――ガトガト逆輸入によって一気に御庭番衆の存在感をかき消してしまった観柳。それどころか蒼紫たちの命まで風前の灯火に、というところで次回に続きます。


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