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2023.10.15

『るろうに剣心』 第十五話「その男・雷十太」

 出稽古に向かった薫と共に前川道場を訪れた剣心。だがそこに剣術の行く末を憂うと称する壮漢・石動雷十太が現れ、道場破りを仕掛けてきた。師範を叩きのめして看板を奪おうとする雷十太と対峙する剣心だが、雷十太は自ら引き下がるのだった。後日、剣心を招いた雷十太は、自分の存念を述べるが……

 いま一番北海道編への登場が待ち望まれると言われ(というか私が言った)、かつ今回のアニメ版への登場が危ぶまれた男・石動雷十太が、今回から無事に登場であります。
 キャラクターのコンセプトとしては面白かった(そして何気に刀から飛び道具を放つという、作品全体を通じても珍しい技の使い手だった)ものの、何故かあらぬ方向に突き進んでいき、最後はなんとも締まらない結末を迎えた雷十太。そのために作者からは失敗扱いされていたこともあり、ファンからは妙に愛されているものの、作者自身が監修に当たっている今回のアニメ化では、なかったことにされるのでは――と個人的には心配していたのですが、こうして登場するということは、おそらく描写や扱いにもそれなりの変化があるということなのでしょう。

 それを裏付けるように――といってよいかはわかりませんが、今回の脚本を担当したのは、おそらく作者の次にるろ剣に精通しているであろう黒碕薫。内容的には原作に忠実ながら、ほとんどの台詞に手が加わり、細かい描写に変化があったことで、印象が変わった場面もありました。
 もちろんその影響を一番受けたのは雷十太であります。特に、前川道場での剣心との試合で必殺の秘剣・飯綱(ここでの太刀筋の描写はなかなか面白かった)を躱されて自ら退いた後、帰り道で冷や汗タラリ――という原作での一幕がなくなったのは、何気に大きかったと思います。

 それにしても今回アニメで見直してみると、雷十太という男は、道場破りという時代遅れの蛮行――特に今回、原作とは違い、折れた竹刀で意識を失った前川の顔を攻撃しようとするという、やりすぎな行動が印象に残ります――を働く一方で、塚山家に剣術師範として入り込んでいる(そしておそらくそこを足がかりに自らの目的を果たそうとしている)辺り、単なる暴力バカではなく、一種の社会性が感じられるのが面白いところであります。
 塚山家で剣心を迎えた際も、道場破りの際のいかにも古流の剣術家らしい天狗めいた格好から一転、羽織袴姿で現れるなど、これまでの敵とは一風変わったどこかクレバーな部分があるのが、ユニークであります。
(もっとも原作ではこの先がアレだったので、振り返ってみれば社会性や知性といっても、比留間兄のソレと同レベルに見えてしまうわけですが……)

 いずれにせよ、これまでの刃衛や蒼紫といった強敵とは、平和な明治の世において戦いに執着するという点では等しいのですが――しかし幕末の影を色濃く背負っている二人とは異なり、むしろそこから遥かに過去の古流剣術を称しつつも、剣術の行く末を憂うというある意味未来を見据えた持論を唱える雷十太。
 さらにいえば、西洋銃火器にも負けぬ剣術を目指すというのは、ある意味、後の劍客兵器にも通じる思想が――というのは牽強付会に過ぎますが、これまでだけでなく、この先も含めて、『るろうに剣心』という作品に登場する敵キャラクターの中でも異彩を放っている存在であることは間違いありません。

 もちろん、それが結局は――だったのが大問題だったわけですが、はたして今回のアニメ版ではその辺りに変化をつけてくるのか。この先の展開が大きく気になっている次第です。


 ちなみに原作では前川宮内に「まえかわみやうち」とふりがなが付いていた前川師範、今回は「まえかわくない」となっていたのは、やはりこちらの方が正しいということなのでしょう……(何気に江戸二十傑から地味に十二傑と八人ランクアップしていたのもちょっと面白い)

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