「コミック乱ツインズ」2023年11月号(その二)
「コミック乱ツインズ」11月号の紹介の続きであります。
『江戸の不倫は死の香り』
江戸時代、不義密通が招く惨劇を描く連作シリーズも早くも第四回。今回は鋳物師の重次郎とその妻・おさ多を巡る物語であります。
留守中におさ多が男を引っ張り込んでいた現場を見て激昂、包丁でおさ多の首に切りつけた重次郎。幸いおさ多の命に別状はなかったものの、離縁することになった重次郎ですが、一年後、二人はよりを戻すことに――と、ここで二人が幸せなキス(とその後の色々)をして終了であればエロイイ話で終わるのですが、その後、仲睦まじく暮らしたかに見えた二人を待っていたのは……
いやはや、クライマックスでの重次郎の叫びは非常にごもっともではあるのですが、しかしさすがにこれは――とドン引きさせられる結末は、ある意味突き抜けすぎていて驚かされます。
しかしやはり毎回毎回惨劇で終わるのはさすがに辛いというのも正直な気分ではあります。いや、シリーズのコンセプト的に仕方ない、というかタイトルの時点でそうなるしかないのですが……
『真剣にシす』(盛田賢司&河端ジュン一・西岡拓哉/グループSNE)
ついに調所広郷との「菱刈勇士」勝負も今回で決着であります。三回チャレンジして合計点を競うこの勝負ですが、広郷は最初の回で先行すると、後は数学的に最良の選択を続けるという、勝つためには正しいけど見ていて全く面白くないプレイを披露。後を追う夜市は、命がけの選択を強いられることになりますが、広郷の塩っぷりに我慢できなくなった薩摩隼人たちは「チェストいけっ!」コールで夜市を応援することに……
と、まあこのシチュエーションで夜市が負けるという展開はどう考えてもないわけで、ちょっと盛り上がりに欠けた感のある「菱刈勇士」勝負。夜市が語る、真の最良の選択の内容はなかなか面白かったのですが、結局は度胸と運で勝負が決まってしまったのは、これはゲーム自体にプレイヤーの操作の余地が小さかったためでしょう。
広郷が仕掛けた「延長戦」も、なるほど賭場の作法と言われれば納得なのですが、やはり往生際が悪いというほかなく、勝負自体はかなりいい描写だっただけに勿体ない印象が残りました。
『カムヤライド』(久正人)
気がつけば第50話となかなかの長期連載となってきた本作。前回はオトタチバナの過去が語られ、モンコ・ヤマトタケル・オトタチバナそしてタケゥチが、それぞれの戦う理由を胸に、旅立つことになります。
旅自体は、ノミの宿禰を思わせる謎の男の暗躍により国津神と結んだという蝦夷を攻めるため、ヤマトタケルが一軍を率いて東征するという形ですが――今回の舞台は廬原、今の富士川と大井川の間と、本当にずいぶん東にやってきました。
そこで川辺で野営することになったのを危ぶむタケゥチは、さすがに密偵らしい本作一の分析眼を披露する一方で、相変わらずマイペースなモンコは兵士に絡まれて――というところで新たに登場したのは、かつてヤマトでの戦いで、モンコによって命を救われたと語る膳夫・フシエミ。いかにも本作らしい(作者らしい)渋いオヤジキャラですが、彼の考案した鰻のワサビ焼きは普通に旨そうであります。
が、そこから繋がる思わぬ展開。国津神の接近には異常に敏感なヤマトタケルの裏をかく「敵」の策とは――物語展開的にこうなるよなあ、というのはメタな見方でよろしくないのですが、しかし形としてはこう来るとは! と驚かされつつ、次回からの激戦に期待が高まります(どう考えても相手が悪すぎるのでは、という気がしますが……)
しかし、ヤマトタケルは人間を辞めていますし、オトタチバナは塞ぎ込み、タケゥチはタケゥチだし(夜中のモンコへのリアクションが実にヒドイ)――と、普通の人間のリアクションができるのはモンコのみというのはなかなか大変な話で、彼にかかる負担が心配であります。
次号は巻頭カラーが『鬼役』、表紙はなんと『江戸の不倫は死の香り』、先に触れたとおり、『口八丁堀』が連続掲載、ラズウェル細木の新連載もあるとのことです。
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