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2023.10.16

「コミック乱ツインズ」2023年11月号(その一)

 号数の上では今年も残り二号となった「コミック乱ツインズ」、今回は表紙が最終回目前の『勘定吟味役異聞』、巻頭カラーが『そぞろ源内 大江戸さぐり控え帳』、特別読切は『口八丁堀』が登場であります。今回も印象に残った作品を一つずつ取り上げます。

『ビジャの女王』(森秀樹)
 前回で終わったかと思いきや、今回も続くジファルの過去編、というより回想編。本物のジファル王子を殺し、成り代わったラクダの世話役の子・イーブン=現・ジファル。泣き虫で甘ったれの真ジファルに手を焼きながらも、自由市場の町・バザで、蒙古軍(小さい頃から今の面影がありすぎるラジンが)のラクダを盗もうと考えたイーブンですが、あくまでも子供の身の上、自分も怖気づいてしまうのでした。
 そんな中、やたらとガタイのでかい上半身裸の子供が、蒙古軍相手に槍一本で大暴れしているのを見て、勇気を得たイーブンは、ラクダを盗み出し……

 と、実はかつてジファルもブブもラジンもニアミスしていた、という今回。さすがに出来すぎた因縁という気もしますが、少年ブブのやたらと勢いのいいアクションの前には、その辺の印象も吹っ飛びます。
 そして以前、いきなり登場した冬人夏草が今回も登場。わかったようなわからないような解説は相変わらずですが、あるいは今後も出番はあるのか(しかし、もう随分前の回想での登場であったし……)、謎は深まります。


『口八丁堀』(鈴木あつむ)
 もう常連になりつつある印象の本作、例繰方同心にして北町奉行所一の減らず口と言われる平津内之介が、難題を吹っ掛ける相手を「言の刃仕合」で論破する、変形の法律ドラマであります。
 しかしこれまでは仕合の相手は同じ役人でしたが、今回は、両替屋ゆうずう屋の主・岩五郎という、かなり意外な相手との勝負となります。

 同郷の娘を女衒から買い取るため、店の集金の金・十一両に手を付けた末、自ら番屋に名乗り出た若者・慎助。天涯孤独となった慎助を引き取り、自分の子同様に可愛がってきた岩五郎ですが、しかし罪は罪と言い張り、減刑を求めようともしません。
 それを知った内之介は、なんとか岩五郎を説得しようと――と、共に慎助を救いたいと考えているにも関わらず、役人よりも道理にうるさい石頭の岩五郎との仕合が繰り広げられることになります。

 十両盗めば首が飛ぶと言われた時代に、どうすれば慎助を救えるか、というだけでも難しいところに、岩五郎の説得までと二重の困難が描かれる今回。しかし実は今回はそのうちの後者のみが描かれることとなります。
 慎助への裁きは次号に続く――と、もはや読切ではないような気もしますが、ラストには切れ者で知られる彼の上司が登場。どう考えても次回の仕合の相手になりそうですが、さて。


『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 紀文の送り込んだ暗殺者・庵から家継を守るため、お役目を超えて奮戦した聡四郎。その中で傷を追うことになった聡四郎は――今回はなんと冒頭のみの出番。次回最終回という時に一体、と心配になりますが、今回メインとなるのは吉宗と永渕――前回、暗殺騒動のどさくさに紛れて大奥から持ち出された、柳沢吉里が綱吉の子であるという書付を巡るドラマが展開することになります。

 もはや八代将軍を巡り、敵となるのは吉里のみとなった吉宗。吉保の恩から、吉宗を付け狙う永渕は、本業である徒目付として、吉宗の無断出府を咎めるという名目(賢い!)で再び吉宗暗殺を狙うのですが――しかし書付の存在を知っても不敵に笑う吉宗は何を思うのか。再び貫目で負けた永渕が知ったのは……
 と、もう完全に勘定吟味役の担当から外れた世界の話になってきましたが、今回は聡四郎の敵として、本作の裏の主役であった紀文がついに退場することになります。既に以前退場したような形でしたが、庵の失敗と吉里の動きを経て、ついに完全に店仕舞を決意。これも一つの象徴というべきでしょうか。

 そして次回――聡四郎の出番は!?


 その他の作品は次回ご紹介します。


「コミック乱ツインズ」2023年11月号(リイド社)
 

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